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ムーアの法則は健在! 10nmに突入したGalaxy搭載プロセッサの変遷この10年で起こったこと、次の10年で起こること(16)(1/3 ページ)

今回はSamsung Electronicsの最新スマートフォン「Galaxy S8+」に搭載されているプロセッサ「Exynos8895」を中心に、Galaxy Sシリーズ搭載プロセッサの進化の変遷を見ていく。そこには、ムーアの法則の健在ぶりが垣間見えた。

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「Galaxy S8+」を分解、チップ解析


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 2017年4月、韓国Samsung Electronicsはスマートフォンの新製品として同社の2017年フラグシップモデルと位置付ける「Galaxy S8」および「Galaxy S8+」を全世界一斉で発売した。筆者が代表を務めるテカナリエでは発売と同時にGalaxy S8+を入手して分解、解析調査を行った。

 Galaxy S8/S8+はそのネーミングの通り、Galaxy Sシリーズの8機種目である。Galaxy Sシリーズの初代は2010年6月に発売され、まさにスマートフォンブームの拡大を担った代表的製品の1つになった。初代は、シングルCPUコアの「ARM Cortex-A8」を搭載した45nmプロセッサ「S5PC111」を搭載した。3代目のGalaxy S3からは「Exynos」というブランド名を持ったチップが毎モデルに適用されている。またその後の進化では、CPUコア数やGPUコア数がプロセス進化に応じて増えている。

Tick Tockモデル ―― 搭載プロセッサの変遷

 Galaxy Sシリーズの最近4世代に搭載されたプロセッサは、以下のような進化を遂げている。

Samsung「Galaxy Sシリーズ」搭載プロセッサの変遷(直近4モデル)
スマートフォン
名称
プロセッサ名 CPU
コア数
CPUコア詳細 GPU LTE
モデム
Galaxy S5 Exynos5433 8 32bit ARM Cortex-A15×4コア、A7×4コア ARM Mali T628 MP6 なし
Galaxy S6 Exynos7420 8 64bit ARM Cortex-A57×4コア、 A53×4コア ARM Mali T760 MP8 なし
Galaxy S7 Exynos8890 8 64bit Samsung M1×4コア、A53×4コア ARM Mali T880 MP12 あり
Galaxy S8 Exynos8895 8 64bit Samsung M2×4コア、A53×4コア ARM Mali G71 MP20 あり
作成:テカナリエ

 Samsungは半導体チップを製造するプロセステクノロジーに関しても、いわゆる“Tick Tockモデル”を用いて進化させてきた。Galaxy S4とGalaxy S5は28nmプロセスを、Galaxy S6とGalaxy S7は14nmプロセスを採用している。プロセス世代を進めた年のモデル(Galaxy S4/S6)では、ほとんどアーキテクチャ変更を行わずプロセス世代だけの変更にとどめ、翌年のモデル(Galaxy S5/S7)で大きなアーキテクチャ変更を行っている。

 14nmの最初のモデル(=Galaxy S6)ではARMのCPUコアをそのまま活用したが、翌年のモデル(=Galaxy S7)では自前のCPUコアM1(マングース1)を活用し、さらにLTEなどのモデム通信機能をチップに取り込んだ。通信機能とプロセッサを1チップ化することでQualcommの「Snapdragon」やMediaTekの「Helio」、HiSiliconの「Kirin」といった競合プラットフォームと同じ構成のチップセットをSamsungも持つに至った。

Galaxy S8+の「Exynos8895」を詳細に分析

 図1は、最新のGalaxy S8+の外観および分解、基板取り出しと搭載プロセッサ「Exynos8895」のパッケージである。


図1:2017年4月に発売された「Galasy S8+」とその内部 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 このパッケージ内にはプロセッサだけが収められているわけではなく、LPDDR4メモリチップも内部に実装されている。1つのパッケージに多数のチップを実装することをSIP(Silicon In Package)と言い、多くのモバイル・プロセッサが用いる手法である。ただし1つのパッケージに複数チップを収めるSIPだけでなく、プロセッサチップのパッケージにメモリチップのパッケージを重ね置きするPOP(Package On Package)も活用され、現在多くはPOP実装が用いられている。SamsungはGalaxy S3からS7までPOPを用いてきた。ちなみにAppleの2016年モデル「iPhone 7」は、TSMCの開発したInFO(Integrated Fan-Out WLP)という新しいパッケージ技術を用い、パッケージ内でプロセッサの裏面にメモリを置くという実装を実現した。2016年時点ではSamsungらはAppleに比べて先端実装技術適用の遅れが指摘されていた。

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