たった60秒で精神状態を見透かす映像処理技術:眼電位から眠気を推定する技術も(1/2 ページ)
東芝情報システムは「運輸・交通システムEXPO 2017」で、顔や頸部の微妙な振動から感情を読み取る技術や、眼球の動きから眠気を検知する技術など、飛行機やバス、電車などの事故や事件を未然に防ぐための技術を出展した。
顔や頸部の微妙な振動から精神状態を推定
東芝情報システムは、2017年5月24〜26日に開催された「運輸・交通システムEXPO 2017」で、バスや電車の運転手、飛行機のパイロットの攻撃性、ストレス、眠気などを測定し、事故や事件を未然に防ぐ技術を出展した。展示したのは、精神状態の非接触測定システム「Mental-Checker」や、眼電位センシング(参考出展)などだ。
Mental-Checkerは、対象者の頸部から頭部を60秒間撮影するだけで、その人の精神状態を解析し可視化できる技術だ。顔の表情、眼、耳、頸部の静脈などの微妙な振動をから、「攻撃性」「ストレス」「緊張」「怪しさ」「安定性」「魅力」「活力」「自制心」「抑圧」「神経質」の10項目で対象者の心理状態を捉え、数値化できる。
東芝情報システムの説明員は、「安定性、魅力、活力、自制心の数値が高く、それ以外の数値が低いのが平均的な状態だ。しかし、過労などで疲れている人は、ストレスと緊張の数値が上がり、活力や自制心などの数値が下がる傾向にある。心理的な状態を数値化することは、飛行機のパイロットやバスや電車の運転手の体調を乗務前に確認するのに役立つ」と語る。また、数値としては表れないが、対象者が眠気を感じていると、頭部周辺のサーモグラフィーが青色に変化するため、睡眠状態の把握も可能だという。
Mental-Checkerは実は、ロシアの軍事関連企業ELSYSが開発した技術「DEFENDER-X」をもとに開発されたものだ。DEFENDER-Xは不審者事前検知ソフト。軍事開発の中で集められた10万人以上の人体実験データをもとに、人の感情を50種類のパラメーターに分類している。そのため、監視カメラの画像から人を検出すると、その感情を解析して、ストレス、恐怖、攻撃性などの感情が強い人物を検出できる。これにより、犯罪を未然に防止する。
DEFENDER-Xは既に実用化されており、2014年のソチ五輪では1日平均12万人の来場者の中から不審者の検出に成功した。不審者と検出された人のうち、92%が実際に入場拒否となった。その内訳は、薬物、酒類、火薬類の不法所持犯が72%、異常行動者が8%、チケット不所持者が20%だった。また、ある大規模なマラソン大会では、自爆テロ犯の事前検知に成功している。
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