合併の決断と、国内最大級半導体商社として向かう先:半導体商社トップインタビュー ネクスティ エレクトロニクス(2/4 ページ)
2017年4月1日、国内最大級の売り上げ規模を誇るエレクトロニクス商社「ネクスティ エレクトロニクス」が発足した。自動車向け半導体、電子部品販売に強い豊通エレクトロニクスと、民生機器向けなど幅広い用途向けに半導体デバイス販売を手掛けるトーメンエレクトロニクスが合併して誕生した。なぜ、両社は合併し、この先どこに向かうのか。ネクスティ エレクトロニクス社長の青木厚氏にインタビューした。
なぜ合併だったのか?
EETJ 国内商社の合併では持ち株会社の傘下に事業会社を置く形態が選択される場合があります。それぞれ豊田通商の完全子会社である豊通エレとトーメンエレが共同仕入れをして規模を補い、技術協力していくという道もあったかと思います。
青木氏 確かに持ち株会社の下に何社かの会社を置く形は、事業をやりやすい。事業を拡大するにしても、持ち株会社の下に会社をぶら下げていけば良いというメリットがあるだろう。
豊田通商とトーメンが合併した2006年に、それぞれのエレクトロニクス子会社である豊通エレ、トーメンエレは兄弟会社になった。それ以来、両社はクルマを切り口に協業関係を進めようとしてきた。けれど、協業は協業にすぎなかった。一緒にならないと変わらないと思った。より強くなるためには、もっと人が交わり、組織を時代に応じて再編するなどしていかなければならないと感じた。2社を1社にする道のりは平たんではなく、より高い山を登るようなものだと思う。しかし、一緒になって強くなるには1社になって本当に融合しなければならないと感じていた。
豊田通商における新会社「ネクスティ エレクトロニクス」の位置付け。豊田通商は、今回統合する2社以外に、2社のエレクトロニクス商社(トーメンデバイス、エレマテック)を傘下に持つ (クリックで拡大) 出典:豊田通商
伝統の“トーメン”“豊通”の看板を使わず“ネクスティ”
EETJ 新会社の社名には、長く親しまれ、広く認知されている“トーメン”“豊通”を使用しませんでした。
青木氏 最後まで、両社の名前をつなげた社名も新会社名の候補として残していた。ただ、社内で新社名を募ったところ、トーメンエレの社員の案は「トーメン豊通エレ」が、豊通エレの社員の案は「豊通トーメンエレ」が、最も多かった。当然、社員は皆、自社の名前にこだわりをもっているわけだ。そうしたことも鑑みて、真に1社となるためにも、全く新しい名前がよいと思っていたところ、豊通エレとトーメンエレ(=ともに英文表記の頭文字が“T”)の次(=Next)を意味する「ネクスティ」が候補に挙がり、新社名としてしっくりきた。
通常、豊田通商の子会社は「豊通」を名乗り、コーポレートカラーも青となるが、豊田通商社長の加留部(淳)さんにも「こだわらなくていいよ」と言ってもらえたので、赤をコーポレートカラーにしたネクスティ エレクトロニクスに一新した。
社名を一新したことで周知は必要になるが、それは経営層の仕事だと思っている。
EETJ 統合作業の進捗はいかがですか。
青木氏 統合に向けたワーキンググループを1年ほど前から立ち上げ、組織体制、ITシステムの統合作業を進め、一通り1社としての体制としてスタートできた。だが、多くの社員間で互いを知り、融合していくのはまだまだこれから。ただし、全くの他人ではなく、多少の交流もあったのでゼロではないが、人的交流はまだまだこれからだと考えている。
世界で戦うエレクトロニクス商社へ
EETJ ネクスティの強みはどのあたりにありますか。
青木氏 技術、品質、機能の3つを強化して、グローバル販売網を持つ世界で戦うエレクトロニクス商社を掲げている。
繰り返しになるが、豊通エレ、トーメンエレそれぞれの強みが補完関係にある。豊通エレはずっとクルマに特化してきた。その中で、組み込みソフトウェアエンジニアを600人ほどを抱え、クルマの制御系システム、ソフト開発を10年ほどやってきた。トーメンエレでも、組織こそなかったけれど、組み込みソフトウェアの知見を持つエンジニアがいた。
品質管理機能も両社にあり、1社になれば、西(名古屋)、東(東京)に1カ所ずつ解析センターを展開できるようになる。そして、海外(香港、米国、タイ)の物流拠点の中に品質管理機能を持たせようとしている最中だ。コアとなる組織が強くなるからこそ、横展開、海外展開がしやすくなり、統合効果の1つの表れだと考えている。
海外拠点も統合で34カ所になり、顧客が海外に進出されるたいていの場所に、われわれの仲間がいるという体制がより強化された。
このように足し算するとすごく強くなる。豊通エレは、組み込みソフト開発、品質管理がとても強かった。JASPARでも自動車業界の仲間、一員として入り込んで、一緒にカーエレの明日をどうしていくかというかいう議論の中に入ってきた。トーメンエレは、自動車以外の分野でも強く、幅広い顧客層と幅広い商材があり、モジュールの開発力などを持っている。
EETJ 2016年3月期は約4600億円の売り上げだったと公表されています。2017年3月期の売上高については?
青木氏 2017年3月期の売上高は2016年3月期とほぼ横ばいの約4600億円となった。米ドルベースのビジネスが大きい中で円高影響を受け、横ばいになったと見ている。
EETJ 自動車向けと自動車向け以外の売り上げ構成は?
青木氏 前期とほぼ変わらず、自動車向けが約3000億円で売り上げの65%ほどを占めている。
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