合併の決断と、国内最大級半導体商社として向かう先:半導体商社トップインタビュー ネクスティ エレクトロニクス(3/4 ページ)
2017年4月1日、国内最大級の売り上げ規模を誇るエレクトロニクス商社「ネクスティ エレクトロニクス」が発足した。自動車向け半導体、電子部品販売に強い豊通エレクトロニクスと、民生機器向けなど幅広い用途向けに半導体デバイス販売を手掛けるトーメンエレクトロニクスが合併して誕生した。なぜ、両社は合併し、この先どこに向かうのか。ネクスティ エレクトロニクス社長の青木厚氏にインタビューした。
ソフトウェア開発規模を600人体制から2000人体制へ
EETJ 自動車向け、自動車向け以外のビジネスそれぞれの成長戦略、強化方針をお聞かせください。
青木氏 まず、自動車向け以外のビジネスとしての強化していくのは、ICT・インダストリアルと定めている。
そして、自動車ビジネス、ICT・インダストリアルビジネスで共通して強化していくのが、ソフトウェア領域になる。AI(人工知能)や画像認識、通信といった技術領域は両ビジネスに共通する。
ネクスティグループの全従業員約2000人(海外含む)のうち、800人がいわゆる技術者で、さらにその中の600人がソフトウェアエンジニアだ。これまで600人規模のソフトウェア開発体制で、自動車向けに適したモデルベース開発技術を蓄積し、強みになった。
これからAIや画像、通信というネクスティにとって新しい分野でも自動車向け同様に技術を蓄積していく必要がある。ただ、自社でイチから蓄積していくのは難しいと考えている。そこで、優秀なベンチャー企業に対し出資を行うなどし、知見を外部から調達していく予定だ。さらに開発人員数も確保しなければならない。リソースの増強も、出資などを含め、積極的に投資する。今後、数年で現状の600人体制を、出資先も含め2000人体制にまで引き上げる。
EETJ かなり思い切った投資方針です。
青木氏 ハードウェアだけでは不十分な時代になり、ソフトウェアの需要は今後も大きくなる。既に具体的な需要は自動車市場では見えているし、ICT・インダストリアルでも近い将来、需要は拡大する。
サプライヤーと自動車業界のブリッジ
EETJ 自動車向けビジネスとしての成長戦略をお聞かせください。
青木氏 自動車は自動運転化、電気自動車化が進み、エレクトロニクス需要はますます大きくなる。
そうした中で、自動運転を実現するには自動車メーカーは、命に関わる重要な部分でも、最先端の新しい技術を採用しなければならなくなる。しかも、そうした技術は、これまで自動車とは距離のあった半導体サプライヤーが参入し提供するケースもある。
そこでネクスティは、新規参入サプライヤーに対し、自動車業界とのブリッジになる。品質や事業継続性などが問われる自動車業界の知見と、新たな技術に関する知見を持って、サプライヤーと自動車メーカーを橋渡しする形で、着実にビジネスを広げていくつもりだ。
優秀な技術を発掘し、システム提案
EETJ ICT・インダストリアル向けビジネスの強化方針、成長戦略については。
青木氏 単に、半導体を売るという従来型のビジネスモデルだけでは、大きく成長できない。新たなビジネスモデルを付け加えていく必要がある。ここでも鍵は、技術だと考えている。
具体的には、現在、独自性のある優秀な技術を持つベンチャー企業を30社ほどリストアップし、そのリストの中からビジネス的な広がりを持っていそうな5社ほどを選び、パートナー関係を構築している。そして、そうした優秀なベンチャーの技術をベースにわれわれが、最小でもモジュールレベルのシステムに仕上げ、グローバルに販売しようとしている。
われわれが、中国などの海外で新たに半導体メーカーの販売代理店権を取得し、ビジネスを拡大させていくというのは簡単ではない。パートナーと構築した付加価値のあるシステムを、次の製品開発に困っている顧客に提案する。提案先が、グローバルにビジネスを展開するプレーヤーであれば、海外進出も容易になる。
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