新MIPSコア、Mobileyeの「EyeQ5」に搭載へ:事業は売却される方針だが(1/2 ページ)
Imagination Technologies Groupが、64ビットのCPUコア「MIPS I6500-F」を発表した。同社は2017年5月に、MIPS事業を売却する方針と発表していて、今回の新製品はImaginationにとって重要な鍵を握るものとなりそうだ。
新しいMIPSコアを発表
Imagination Technologies Group(以下、Imagination)は2017年6月13日(英国時間)、高性能のマルチスレッドCPU IP(Intellectual Property)「MIPS I6500-F」を発表した。機能安全を必要とする車載および産業用途向けアプリケーションに不可欠な、MIPSコアを開発する同社の取り組みにおいて、重要な鍵となる製品だといえる。
ImaginationのMIPS事業部門でビジネス開発担当シニアマネジャーを務めるTim Mace氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「MIPS I6500-Fは、演算能力および性能の大幅な向上を実現する。ARMなどの競合企業のCPUプロセッシングコアの出荷数は増加しているが、そのほとんどが組み込みシステムでの利用のみに限られている。しかしMIPS I6500-Fは、こうしたコアとは一線を画す」と説明する。
Imaginationは最近、GPUコアをめぐりAppleと裁判外紛争解決手続を行い、生き残りをかけた戦いを繰り広げる中で、MIPS事業を売却する決断をしていた。それでもImaginationは、MIPS事業の目標実現に向けた取り組みを失速させなかったのだ。MIPS I6500-Fの使命は、同社のMIPS製品ポートフォリオに新しい風を吹き込むことにある。
I6500-Fの開発チームは、「機能安全を必要とする強力な計算集約型システムに不可欠な、新しい世代のSoC(System on Chip)を実現する」という目標に向かって開発を進めてきた。
MIPS I6500-Fは、Mobileye(Intelによる買収が間もなく完了予定)が2018年にサンプル出荷の開始を予定しているSoC「EyeQ5」の中核を担うことが分かっている。EyeQ5は、処理能力が12T(テラ)FLOPS、消費電力が5W未満であることから、BMW、Intel、Mobileyeが共同で開発中の自動運転車向けプラットフォームを駆動する、主要なSoCの1になるとみられている。
ヘテロジニアスなアーキテクチャをサポート可能
MIPS I6500-Fは、現在広く普及しているMIPS I6500 CPUをベースとしている。MIPS I6500 CPUは、マルチスレッド処理やマルチコア、マルチクラスタ処理によって、組み込みからクラウドまで拡張可能な、64ビットCPUである。
Mace氏は、「MIPS I6500-Fは、マルチスレッド処理が可能なマルチコアMIPS CPUのヘテロジニアスなクラスタを最大64個まで拡張可能な性能を備えることから、ヘテロジニアスコンピューティングアーキテクチャにおいて動作するCPU向けとして理想的だ」と説明する。
例えば自動運転車は、AI(人工知能)を活用するために、高性能CPUと独自開発のハードウェアアクセラレーションユニット(GPUやFPGA、専用ハードウェアなど)の両方を搭載するシステムを実装することになるとみられている。MIPS I6500-Fは、このようなヘテロジニアスコンピューティングを使用するための機能を備えている。
米国の市場調査会社であるABI Researchでマネージングディレクター兼バイスプレジデントを務めるDominique Bonte氏は、「Imaginationが強調しているように、マルチスレッディングと仮想メモリの共有は、CPUとAIハードウェアアクセラレーターの間に位置するヘテロジニアスアーキテクチャでの通信をサポートする上で、重要な鍵となる」と指摘する。
またMace氏は、I6400およびI6500のL2キャッシュとコヒーレンシマネジャーの長所について、「IOCU(I/O Coherence Unit)は、低遅延とアクセラレーター専用の接続を実現し、共有仮想メモリ(SVM:Shared Virtual Memory)は、アクセラレーターとCPUを、より高速、高効率で接続できる」と説明している。
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