MIPSコンピュータをめぐる栄枯盛衰:イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜(14)(1/3 ページ)
RISCプロセッサの命令セットアーキテクチャである「MIPS」。そのMIPSを採用したワークステーションの開発には、日本企業も深く関わった、栄枯盛衰の歴史がある。
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Imaginationが“身売り”
2017年6月22日(英国時間)、GPUコアベンダーであるImagination Technologies(以下、Imagination)は、同社の取締役会が全社売却を決定したと発表した。Imaginationの主要顧客であるAppleから技術利用停止の通達を受けたことが、その背景にあると考えられる。
Imaginationといえば、2013年2月にMIPS Technologiesを買収したことも大きな話題を呼んだ。この買収が発表された時は、CPUコア業界に激震が走ったものだ(関連記事:CPUコア業界に地殻変動、MIPSをImaginationが買収)。MIPS Technologiesは、“RISCの先駆者”ともいえる存在だったからだ。今回はぜひ、そのMIPS Technologiesが開発したRISCマイクロプロセッサの命令セットアーキテクチャである「MIPS」に関連する話を紹介したい。
参考:入門者の方には、EDN Japanの「Q&Aで学ぶマイコン講座(1):CISCとRISC、何が違う?」もオススメです。
CISCからRISCの時代へ
もともと、プロセッサの命令セットアーキテクチャは、伝統的にCISCだった。だがCISCはご存じの通り、命令セット数が非常に多い。そこで1980年代のはじめに登場した考え方がRISCだ。「RISC(Reduced Instruction Set Computer)」という名前の通り、命令セット数が100以上に上るCISCに比べ、数十個と圧倒的に少ないことが最大の特長である。
MIPSは、1984年に米カリフォルニア州サニーベールに設立されたMIPS Computer Systemsによって開発された。これが、MIPS Technologiesの前身となる。共同創設者の1人はEdward "Skip" Stritter氏(あだ名が"Skip"だった)で、同氏は筆者のスタンフォード大学時代の友人である。なお、本記事ではこれ以降、MIPS Computer SystemsあるいはMIPS Technologiesを示す時は「MIPS社」、アーキテクチャを示す時には単に「MIPS」とする。
実はStritter氏は、旧Motorolaが開発したCISCマイクロプロセッサ「MC68000」のチーフ設計者だった。MC68000は、Appleの「Lisa」「Macintoch(Mac)」に採用されたことでも有名だ。
CISCプロセッサを開発していたStritter氏は「これからはCISCではなく、RISCの時代だ」と考え、MIPS Computer Systemsを設立したのである。そして1985年、初めての商用RISCプロセッサとして「R2000」を発表した。
MIPSは成功をおさめ、日本でもNECなどが採用している。ただ、64ビットプロセッサ「R4000」をリリースしたところで財政難に陥り、1992年に米SGI(Silicon Graphics International)がMIPS Computer Systemsを買収。これにより、MIPS Computer SystemsはSGIの子会社となり、MIPS Technologiesという社名に変更された。
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