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力任せの人工知能 〜 パソコンの中に作る、私だけの「ワンダーランド」Over the AI ―― AIの向こう側に(12)(3/9 ページ)

私はこれまで、人口問題や電力問題、人身事故などさまざまな社会問題を理解するためにシミュレーションを利用してきました。シミュレーションは、AI(人工知能)という概念を飛び越えて、「人間が創造した神」と呼べるかもしれません。今回は、シミュレーションに最適なAI道具の1つとして、「オブジェクト指向プログラミング」を解説します。これは、PCの中に“私だけのワンダーランド”を力任せに作る技術ともいえます。

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力任せで何とかなるかもしれない? 「AI技術」

 こんにちは、江端智一です。

 前回の「おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉」は、今や、AI技術の研究開発や、ビッグデータ解析が、自宅で可能となるほど、パソコンの性能が向上しているというお話をしました。

 しかし、パソコンの性能がどれほど上がり、自宅で研究開発を継続できるようになったとしても、AIの「プログラミング」を行える人間がいなければ、AI技術の発展は望めません。

 そもそも、私は、「AIブームの終焉」という題目で講演をしてきた当事者ですが、これまでと同様に『ブームだけで、AI技術研究が殺されていく』ことだけは、断固阻止したいと思っています。

 AI技術開発を、もう国家や企業の手なんぞに委ねない。AI技術は、私たち技術者の手だけで、コツコツと作っていくんだ ―― Linuxコミュニティーのように

と考えていますが、この話はいずれまた。

 話を戻しますが、会社であれ、自宅であれ、ともかく、現時点においてAI技術を継続的に開発するためには、プログラマーが必要です。(単なるAI技術(アプリ)のユーザーなら、プログラマーでなくてもいいのですが)。

 2020年から始まるプログラミング教育で、どの程度のプログラマー人口の増加が見込めるのかは現時点では試算できませんが、前述した、私が定義した“デジタルアクティブ"の人口比率の増加だけは見込めると思ってよさそうです。

 "デジタルアクティブ"が増加すれば、「おうちでAI研究」を続けられる「リタイア世代」という(私にとっては夢のような)未来が期待できます(かな?)。

 しかし、新しいAI技術の研究開発には、突出した才能と、若い柔軟な感性が必要です。

 そこで今回は、ノンインテリジェントで、力任せで、勢いだけあるようなシニアであっても、なんとかなる(かもしれない)AI技術の一つとして、「マルチエージェント技術」と「シミュレーション技術」についてお話したいと思います。

 「マルチエージェント」や「シミュレーション」が“人工知能技術”なのかどうか」については、今回も『江端AIドクトリン』に基づいて私が勝手に判定しました。

 「シミュレーション」とは、コンピュータの中に仮想的な現実世界を作るもので、「マルチエージェント」とは、性質の異なるエージェント(仮想的なモノやヒトのオブジェクト)を相互に作用させるAI技術です。「マルチエージェント」は、多くの場合、「シミュレーション」の世界の中で使われます。

 そもそも、シミュレーションなくして、にエージェントに知識を学習させたり、その能力を検証させたりすることは考えられません。例えば、シミュレーションもしないで、自動運転車をいきなり公道で走らせる、という場面を想定してもらえれば、ご理解いただけると思います。

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