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テスラの死亡事故、ドライバーに何度も警告米機関が調査結果を公表(前編)(1/3 ページ)

2016年、自動運転モードで走行していたTesla Motors(テスラ)「Model S」が大型トレーラーと衝突し、Model Sのドライバーが死亡するという事故が発生した。“自動運転中の初の死亡事故”ということで大きな話題を呼んだこの事故について、米国家運輸安全委員会は、500ページに上る調査結果を公表した。

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500ページに上る報告書

 米国家運輸安全委員会(NTSB:National Transportation Safety Board)は2017年6月19日(現地時間)、Tesla Motors(以下、Tesla)の「Model S」が2016年5月に、高速道路を自動運転中に大型トレーラーとの間で起こした死亡事故について、500ページにわたる報告書を発表した。事故発生から1年以上にわたり、調査を行ってきたという。

 Model Sの事故は大きな問題となったため、自動運転車の開発に躍起になっている自動車業界にとって、今回のNTSBの調査報告書は、データの宝庫といえるだろう。しかし、この事故で死亡したドライバーに対する責任がどこにあるのかを判断するまでには至っていないようだ。

 NTSBの報告書には、高速道路の設計や、自動車の性能、人間の能力、自動車運送業者など、さまざまな要素が記載されている。また、衝突再現に関するレポートには、破壊シーケンスに関する説明の他、インタビュー記録や概要、写真など、調査に関する詳細が記されているという。

 NTSBは、「今回の報告書は、NTSBの捜査当局が収集した事実情報を記したものであり、分析を行ったわけではない。このため、事故の発生原因に関する結論はまだ出ていない」と強調する。NTSBは後日、事故の推定原因について、独自の分析、調査結果や、提言、判断などを発表する予定だとしている。

 報告書によると、Tesla車からダウンロードしたシステム性能データを調査したところ、同車がトラクタートレーラーと衝突する直前の速度が、時速74マイル(時速119km)だったことが明らかになったという。また、Tesla車のドライバーが当時、自動運転制御システムとして、「TACC(Traffic-Aware Cruise Control)」と自動ハンドルレーンキープシステムを作動させて走行していたことも分かった。

先進運転支援システム

 読者にとって今回の報告書の中でも特に興味深い項目は、「先進運転支援システム」ではないだろうか。

 報告書では、Teslaの運転支援システムがどのように機能するのかを、徹底的に調査している。同システムは、Boschのレーダーシステムと、Mobileyeの画像処理システム、超音波センサーシステム、ゲートウェイECU(電子制御ユニット)によって構成されている。文字通り、Model Sの運転支援システムを分解するような形で調査が行われた。

 Teslaが収集したデータをどこでどのように記録され、どこを経由して自動車内部に保存されていたのかということや、これらのデータを、Wi-Fiで構築したVPN接続や自動車の3G(第3世代)セルラーデータ機能を使用して、どのように同社サーバに送信していたのかといったことなど、驚くべき事実が幾つか明らかにされている。

 報告書によると、TeslaのModel Sは、ゲートウェイECUに搭載されたリムーバブルSDカードを使用して、車載用不揮発性メモリに非位置情報データを保存するという。

 SDカードがいったいどのように使われ、どのような役割を担っているというのだろうか。

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