検索
特集

ムーアの法則の終息でIDMの時代に“逆戻り”か?統合が進む半導体業界(1/2 ページ)

米国サンフランシスコで開催されたコンピュータ関連のイベントで、半導体業界の専門家たちがパネルディスカッションを行い、「ムーアの法則」を中心に業界の今後について議論した。専門家の1人は、Appleの動きや、近年の大規模なM&Aの動きから、半導体業界はIDM(垂直統合型)に近い形に“逆戻り”するのだろうか、との疑問を投げかけた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

ムーアの法則終息により、半導体業界は変化する

 米国計算機学会(ACM:Association for Computing Machinery)は2017年6月23〜24日、米国カリフォルニア州サンフランシスにおいて、「Alan Turing Award」の50周年を記念するイベントを開催した。その中で専門家たちがパネルディスカッションに登壇し、「半導体およびコンピュータ業界は今後、ムーアの法則が終えんすることにより、変化していくだろう」と主張した。

 専門家たちは、「半導体やシステム、ソフトウェアなどのさまざまな技術は、今後も進化し続けていくが、今までと同じペースでというわけにはいかない。半導体業界やシステム業界は現在のところ、CMOS微細化に代わる新しい技術を確立できていないため、今後は垂直統合へと再形成されていくのではないだろうか」と述べる。


John Hennessy氏

 かつて米スタンフォード大学(Stanford University)で学長を務めた経歴を持ち、マイクロプロセッサ関連の主要な教科書の著者でもあるJohn Hennessy氏は、「“集積回路のトランジスタ数は18カ月ごとに2倍になる”というムーアの法則は、過去25年間にわたりその実現を維持してきた。しかし2000〜2005年には、“2〜3年ごとに倍増”にペースが減速し始め、近年では“4年ごとに倍増”と、さらに遅れるようになった。これまでの予測通り、CMOSの微細化は限界に近づきつつある」と述べている。

 Hennessy氏は、「デナード則(MOSFETの比例縮小則)*)では、MOSFETの微細化に伴って消費電力も低減していたが、この法則は既に過去のものとなっている。これは『ダークシリコン問題』を生み出し、マルチコアプロセッサへの移行が迅速に進んだ」と続けた。

*)関連記事:NVIDIAがMOSFETの比例縮小則(デナード則)を解説

 米プリンストン大学のシステム専門家であるMargaret Martonosi氏は、「現在のムーアの法則は実際のところ、物理的法則ではなく、経済的見解となっている。そこで問題となるのが、ムーアの法則には、CMOSのようにROI(Return On Investment:投資利益率)を確保することが可能な、別の物理的な側面があるのかどうかという点だ」と述べる。

誰もがムーアの法則に“ただ乗り”させてもらっていた


MicrosoftのDoug Burger氏

 MicrosoftのAzureクラウドサービス部門でFPGAアクセラレーターの開発を手掛ける著名なエンジニアであるDoug Burger氏は、「ムーアの法則は、トランジスタ集積密度に関する法則であり、そのペースがほぼ予測不能となっている今、既に終わりを迎えたと言ってよいと、個人的には考えている。CMOSの微細化は今後数世代で、物理的な限界にも達する」と主張する。

 Burger氏は、「誰もがムーアの法則に“ただ乗り”させてもらっていたのだ。ムーアの法則が終えんを迎えると、荒涼とした混乱の時代へと突入し、面白い状況になるのではないだろうか」と述べている。

 ベテランのマイクロプロセッサ開発者であり、Googleの「TPU(Tensor Processing Unit)」開発チームでリーダーを務めるNorm Jouppi氏は、「CMOSの微細化は、あと数年間は可能だと考えている。中には、この先10年間にわたり性能を向上し続けることができるアプリケーションもあるかもしれないが、ほとんどが、もっと緩やかなペースで進展していくとみられる」との見解を示した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る