電圧トルクMRAM、書き込みエラー率を低減:高信頼性と低消費電力を実現(1/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)は、電圧書込み方式磁気メモリ(電圧トルクMRAM)の書込みエラー率を従来の200分の1に低減する技術を開発した。
超薄膜金属磁石層(記憶層)の作製プロセスを改善
産業技術総合研究所(産総研)スピントロニクス研究センター電圧スピントロニクスチームの塩田陽一元研究員(現在は京都大学大学院理学研究科助教)と野崎隆行研究チーム長は2017年7月、電圧書込み方式磁気メモリ(電圧トルクMRAM)の書込みエラー率を従来の200分の1に低減する技術を開発したと発表した。これにより、1回のエラー訂正(ベリファイ)で、実用的な書き込みエラー率を達成することが可能となる。
携帯機器の消費電力は、CPUやメモリのそれが全体の30〜40%を占めるといわれている。このため、メモリでは待機電力ゼロのMRAMが注目されている。ところが、開発の主流となっている電流書き込み方式のMRAMだと、電流による発熱が課題となっている。これに対し電圧トルクMRAMは、電力消費が小さく高速動作も可能という特長を持つ。しかし、書き込みエラー率は高い。このため、ベリファイを繰り返すことによって、書き込みエラー率を実用レベルまで低減する必要があった。
研究チームは今回、単一パルスによる書込みエラー率の低減に取り組んだ。これまでのシミュレーション結果から、電圧トルクMRAMの書き込みエラー率を低減する方法として、磁気トンネル接合素子(MTJ素子)の記憶層に高い熱じょう乱耐性を持たせることと、それを打ち消す強度の電圧をかけることが有効だといわれてきた。そこで、記憶層となる超薄膜金属磁石層の作製プロセスを改善して、高い熱じょう乱耐性と高い電圧磁気異方性変調効率を両立する技術を開発した。
開発した垂直磁化型MTJ素子は、記憶層(鉄コバルト合金)、絶縁層、磁化固定層で構成されている。鉄コバルト合金の膜厚は数原子層と極めて薄く、パルス電圧を印加して磁気異方性を制御することができる。開発した素子は、電圧を印加すると磁化が回転し、電圧を切ると回転が止まる。半回転した状態で止めると磁化が反転しメモリへの書き込みが行われるという。
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