直射日光下でも可能、パターン投影での形状計測:外乱光をノイズとして除去(1/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)は、外乱光をノイズとして除去する画像処理によって、直射日光下でもパターン投影による高速形状計測を行うことに成功した。
屋外での運動体計測などが可能に
産業技術総合研究所(産総研)知能システム研究部門コンピュータビジョン研究グループの佐藤雄隆研究グループ長と佐川立昌産業技術企画調査員は2017年7月、外乱光をノイズとして除去する画像処理によって、直射日光下でもパターン投影による高速形状計測を行うことに成功したと発表した。
産総研はこれまで、波線グリッドパターンを用いて、撮影した瞬間の画像1枚から形状を計測できる「ワンショット形状計測法」などを開発してきた。この手法と高速度カメラを組み合わせると、高速に運動/変形する対象物について、表面形状の変化を計測することができる。
このため、スポーツ運動の解析や医療応用、工場ライン内を流れる物品の計測、衝突変形する物体の解析などへの応用が進められているという。ところが、屋外での太陽光など強い外乱光がある環境では、カメラで撮影したパターンが外乱光に埋もれて、適切な画像処理が行えないこともあった。
そこで今回、強い外乱光がある環境でも、形状計測が行える技術の開発に取り組んだ。そこで注目したのが、無線通信で採用されているノイズ除去技術で、スペクトラム拡散変調技術の一つである直接拡散方式を応用した。ここでは拡散符号として擬似乱数列を用い、それに従って光源をオン「1」、オフ「0」させる。光源を点滅させながら乱数列の数だけパターンを投影することで、狭帯域信号を広い周波数帯域に拡散(変調)させるという。
測定対象物に投影されたパターンをカメラで撮影し、その画像群と拡散符号との畳み込み演算によって、狭帯域に圧縮して逆拡散(復調)させる。この時、画像上のノイズは拡散され、復調時に周波数範囲外として自動的に除去されるという。このため、パターンの信号が外乱光に比べて非常に弱い場合でも、長い拡散符号を用いることでパターンを復元できる。拡散符号が長いほどピーク信号対雑音比(PSNR:Peak Signal-to-Noise Ratio)は向上し、外乱光除去効果が増すことが分かった。
開発した手法だと複数の画像を撮影しなければならない。このため、観測対象が高速運動する場合には注意する必要がある。そこで、ハイスピードカメラを用いた高速撮影時は、復調時に低周波をカットするフィルタリングを行った。これによってパターン復調時の誤差を除去することができたという。
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