5G技術開発は加速も、基地局への投資は減少傾向:2021年以降に回復か
5G(第5世代移動通信)の実現に向けた研究開発が加速しているが、基地局への投資は今後数年間は減少するとみられている。市場調査会社のDell'Oro Groupが予測を発表した。
基地局の売上高は減少
Dell'Oro Groupが新たに発表したレポートによると、5G(第5世代移動通信)に対する熱の高まりにもかかわらず、セルラー基地局への設備投資は今後3年間にわたり大幅に減少し続けることから、同分野が成長に転じるのは2021年になる見込みだという。
このレポートは、予想を下回る四半期決算を発表した大手通信機器メーカーのEricssonによる予測とおおよそ一致している。Dell'Oroは、基地局の売上高が、2015年と2016年に1桁台前半の減少率で落ち込んだのに続き、2017年も1桁台後半の減少率で減少すると予想した。Ericssonは同市場が2019年には横ばい成長になるとの見立てを示している。
このニュースは、無線関連機器ベンダーの不安定な立場を明確に示すものといえる。これらのベンダーは現在、5G技術とサービスの開発に膨大な投資を行う一方、4G(第4世代移動通信)の大規模な展開を終わりに導こうとしている。
Dell'Oroのシニアディレクター兼アナリストであるStefan Pongratz氏は、「このような小康状態は、全ての地域のあらゆるベンダーに影響を与えている。Ericsson、Nokia、Huaweiの3大ベンダーもその影響を免れてはいないが、これまでのところHuaweiはEricssonとNokiaよりもうまく乗り切っているようにみえる。北米ではいくらかの明るい兆しが見えるが、中国市場は2017年に縮小することが見込まれる。また、欧州全体では減退するとみられている」と述べた。
Reuters(ロイター通信)の報道によると、Ericssonは2017年第2四半期に1億4530万米ドルの損失を計上した。売上高と粗利益はいずれもコンセンサス予想を下回ったという。また、同社は約10億米ドルのコスト削減を計画しているようだ。
Pongratz氏によると、特に中国におけるLTEの急速な台頭によって、セルラー基地局の年間売上高は2014年に330億米ドルというピークに達した。それ以降、同売上高は現在までに40億米ドル近く減少していて、2021年に5GのマクロセルとLTEのスモールセルの売上高に後押しされて少しずつ持ち直すようになるまでに、さらに約60億米ドル下落する見込みだという。
Pongratz氏は「2017年から2021年までの無線アクセスネットワーク市場の累計収益は、当社が2000年に同市場をモニタリングし始めて以降、最も低迷する見込みだ。LTE AdvancedとLTE Advanced Proは何らかのアップグレードが予定されているが、アップグレードフェーズは一般的に成長をもたらすものではなく、マクロセルの数の減少を埋め合わせるにとどまるだろう」と述べた。
5Gの展開は、初期は3GHzおよび6GHz以下の周波数帯のマクロセルが中心となるだろう。その後、早い段階で都市において5Gスモールセルが設置されるとみられる。2021年には、通信キャリアによる5G市場への設備投資のうち約5%を、ミリ波帯を使うサービスが占めるようになるという。
Reutersの報道によると、スモールセルの売上高は2017年から2021年にかけて4倍になる見込みであるものの、そのほとんどはLTEに向けたものになるという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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