検索
ニュース

IoT時代、ディープラーニングの主用途は制御かPFN、同社のAI事業を説明(1/2 ページ)

Preferred Networks(PFN)は、IoT(モノのインターネット)にディープラーニングを活用する意義について、自社の応用例を挙げて説明した。また、IoTの普及でデータ量がどの程度増加するかを取り上げた上で、ディープラーニングの処理性能向上に向けた自社の取り組みについて語った。

Share
Tweet
LINE
Hatena

デバイスの制御にディープラーニング

 Preferred Networks(PFN)は2017年7月24日にメディア向け説明会を開き、同社の事業展開について説明した。PFNが目指すのはIoT(モノのインターネット)とディープラーニングの融合である。他社と提携しIoTでのディープラーニングの実用化を進めるとともに、IoT普及によるデータ量の増加に対応すべくディープラーニングの処理性能向上を図るという。

 PFNは、IoT分野での活用を中心にディープラーニングの研究と開発を進めている企業だ。その事業方針について、同社CEOの西川徹氏は「PFNにはAI(人工知能)の研究者に加え、自動車やロボットの専門家も社内にいる。アルゴリズムを開発するだけでなく、トヨタ自動車やファナックなどと協業し、ディープラーニングの実用化にも取り組んでいる」と説明する。


Preferred Networks(PFN)のCEO、西川徹氏

 西川徹氏は説明会で、「データの分析に終わらず、デバイスの制御に結び付けられるのが、IoTに応用する上でのディープラーニングのメリットだ」と語った。数あるAIの中でもディープラーニングがデバイスの制御に適している理由は、未知のデータに対処する性能(汎化性能)が高いからだという。

 デバイスの制御に汎化性能が必要とされる代表的な例は自動運転だ。「例えば、雪山、雨の中、荒れた路面など、通常の路上とは違う未知の環境でも自動車は走れなければならない。学習経験のない環境で柔軟な対応をさせるには、ディープラーニングの汎化性能が不可欠となる」(西川氏)

 ディープラーニングを自動運転に応用した事例として、西川氏は2016年1月に米国ラスベガスで開催された「CES 2016」でトヨタ自動車と共同出展したデモを挙げた。このデモでは、ディープラーニングを活用した白い車が、人間が運転する赤い車を避けて走行しているが、西川氏は「学習時には、人間が運転する車を全く走らせていない」という。


「CES 2016」で実施した自動運転のデモ 出典:PFN(クリックで拡大)

 PFNは産業用途にもディープラーニングを応用し、自動ピッキングロボットの開発を進めている。「箱の中にある物が何であれ、いかなる状態で入っていようと、ピッキングロボットはそれを正確に認識し、つかめなければならない。そのため、ピッキングはロボットにとって最も難しい作業の1つだ」(西川氏)。だが、PFNは物体認識に限らず、ピッキングの仕方の学習にもディープラーニングを活用。ピッキングロボットの器用さを競う国際大会「アマゾンピッキングチャレンジ」では2位に入賞した。

 PFNがディープラーニングを応用している分野はもう1つある。がんの診断だ。国立がん研究センターと共同で、ディープラーニングを乳がんの診断に役立てる研究に取り組んでいる。西川氏によると、一般的な乳がんの診断法であるマンモグラフィーでは5人に1人、血液解析により診断するリキッドバイオプシーでも10人に1人の割合で見落としがあるという。PFNは乳がんの検出率99%以上を目指し、リキッドバイオプシーの精度をディープラーニングで高める研究に着手している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る