検索
特集

AI発展のため、脳の研究に立ち返る科学者たち海馬や小脳に匹敵する機能を(1/2 ページ)

AI(人工知能)の研究開発を進めるに当たり、研究者たちは「脳の機能を理解する」という原点に立ち返っているようだ。研究がより進めば、AIの性能もそれだけ向上するのではないかと期待されている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

神経科学とエレクトロニクス

 起業家であるPhillip Alvelda氏は、「研究者たちは現在、脳がどのように機能するのかという、根本的な課題に直面している。しかし、こうした取り組みにより、コンピューティングやヘルスケアの分野において、飛躍的な成果が達成されるとの期待が高まっている」との見方を示した。同氏は最近、神経科学とエレクトロニクスとが交差する領域において、取り組みを進めているところだ。

 Alvelda氏は、埋め込み型の神経電気インタフェースを開発するための研究プログラムの構築をサポートしている他、最近では、海馬と小脳に匹敵する機能をデジタル環境で実現するという野心的な目標を掲げ、新興企業Cortical.aiを設立したという。


Cortical.aiは、海馬と小脳に匹敵する機能をデジタル環境で実現することを目指して設立された 出典:Hot Chips

 同氏は、米国カリフォルニア州クパチーノで2017年8月20〜22日に開催された「Hot Chips 2017(Host Chips 29)」で基調講演に登壇し、「研究グループは今や、マウスの全大脳皮質の150万個に上る神経細胞の信号を追跡できるようになった。マウスの前に画像を置き、それがどのように処理されるのかを読み取ることで、実際の神経コードを探り出すことが可能だ」と述べている。

 同氏は、2009年ごろに始動した神経情報理論に関する取り組みについて触れながら、「脳内でどのように情報がコード化されるのかは、まだ明らかになっていない。恐らく、(既存のコンピュータで使われているような)信号やスイッチのコードではなく、共有チャンネルに複数の信号が到達した相対的時間がベースとなっているのではないだろうか」と述べる。

 また同氏は、「Amazonの『Alexa』や、IBMの『Watson』、Facebookの畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)といった既存のディープラーニング(深層学習)システムは、比較的サイロ化されているため、それぞれの領域を超えて汎用化することが難しい。当社の深層学習システムにも、感覚や記憶の統合に関連する共通コードが必要だ」と付け加えた。

 既存のニューラルネットワークに関しては、GFLOPSクラスのバーチャルコンピューティング(消費電力は約30W)のブレーンに対し、比較的荒削りだとする見方も多い。

 ベテランのコンピュータアーキテクトであるDoug Burger氏は、「脳は、さまざまな種類の計算モデルをベースとして構成されており、まだ部分的にしか解明されていない。このため、深層学習関連のシステムは、それぞれ異なる方向に進んでいる」と指摘する。同氏は、Microsoftが最近発表した機械学習用システム「Brainwave」の開発に携わったという。

 Burger氏は、Hot Chips 2017の会場でインタビューに応じ、「コンピューティングの生物学的モデルに立ち戻り、新たな“ムーアの法則”を見つけるべく新しいモデルに投資するなど、飛躍的な進歩を実現する必要がある。生物学的モデルのメリットは、実際に存在していることが分かるという点にある。ディープニューラルネットワークにどれくらいのデジタルヘッドルームが存在するのかは、全く分かっていない」と述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る