次期iPhone、NFCチップで“番狂わせ”はあるのか:STMがNXPに取って代わる?(1/3 ページ)
もう間もなく、Appleから新型「iPhone」が発表される。搭載される部品で、サプライヤーが交代するという“番狂わせ”はあるのか。NFCチップのサプライヤーについて検証してみよう。
新型「iPhone」、NFCチップのサプライヤーは?
Appleが2017年9月に発表を予定している新型「iPhone」には、どのメーカーのNFC(近距離無線通信)チップが搭載されるのだろうか。
もし、長年にわたって採用されてきたNXP Semiconductors(以下、NXP)のNFCチップに代わり、STMicroelectronics(以下、STM)の製品が搭載されるとなれば、かなりの番狂わせとなり、業界に大きな影響が及ぶだろう。
STMは現在のところ、特定のデザインウィンに関するコメントを拒否し、沈黙を守っている。多くのアナリストたちが、STMのチップが搭載される可能性について懐疑的な見方をしている中、その可能性を肯定する声も上がっているようだ。
ここで、詳細について考察していきたい。STMには、外部要因と内部要因の両面で有利な要素がある。STMは、EE Timesが最近行ったインタビューの中で、同社がこれまで長い間挑戦したことがなかったNFCチップ市場においてNXPの後を追っていく考えであることを、何の隠し立てもせず明らかにしている。
NFC市場での成長に自信を持つSTM
STMは、NFC市場において、成長の可能性を秘めた競合メーカーになれるとの確信を新たにしているようだが、その背景には以下のような要素がある。
1つ目は、Appleが最近、NFCタグの読み取りが可能なアプリを作成すべく、開発者に対し、「iOS 11」向けのコーディングを許可した点だ。このことから、STMは、NFC市場が今後拡大していく見込みであると考えている。もちろん、Androidスマートフォンもこれまで数年間にわたり、同様の取り組みを進めてきたが、ほとんど成果を上げることができなかった。しかし、AppleがNFC市場において影響力を持つようになってくると、STMをはじめ、さまざまな業界観測筋が、「Appleは、NFCチップの用途を、支払い以外にも拡大していくのではないか」と期待するようになってきた。
2つ目は、STMが過去数年間にわたり、企業買収やライセンス供与などによって、ひそかに主要技術を蓄積してきたという点である。同社は、「こうした技術により、当社のNFCチップの性能を、信頼性と対応距離の両面から向上させることが可能だ」と主張する。
そして3つ目に、QualcommによるNXPの買収が完了していないという重要な問題が挙げられる。
EC(欧州委員会)は、この合併提案に対して徹底的に調査を行うことを決定した際、潜在的な問題点として、NXPがNFCおよびセキュアエレメント(SE:Secure Element)チップ市場において業界トップの地位を獲得していることの他、Qualcommがベースバンドチップ市場において優位性を確保していることなどを挙げている。ECは、「両社のような巨大企業が合併するとなると、一括販売や抱き合わせなどの反競争的行為によって、ライバル企業を市場から排除するための策を打って出る恐れがある」と懸念しているのだ。
4つ目は、QualcommとAppleとの間で特許係争が続いているという点だ。このためSTMは、Appleの新型iPhoneにおいて、NFCチップのサプライヤーとしてNXPに取って代わる可能性がある。
STMは、EE Timesの質問に対し、一切コメントをしていない。多くのアナリストたちは、近い将来にそのようなメーカーの入れ替えが行われるとは考えていないようだ。
STMのマイクロコントローラー・メモリ・セキュアMCUグループ担当バイスプレジデントであり、セキュア・マイクロコントローラー事業部門担当ゼネラルマネジャーも兼任するMarie-France Florentin氏は、EE Timesの取材に対し、「当社としては、NFC市場には無数のチャンスが広がっていると考えている」と述べる。
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