NIMS、磁場のみで動作するトランジスタ開発:磁気力によるイオン輸送を利用(1/2 ページ)
物質・材料研究機構(NIMS)は、磁気でイオンを輸送するという、これまでとは異なる原理で動作するトランジスタを開発した。
電圧をかけずに動作する電気化学デバイス実現に道筋
物質・材料研究機構(NIMS)は2017年9月、磁気でイオンを輸送するという、これまでとは異なる原理で動作するトランジスタを開発したと発表した。電圧を印加しなくても動作する新たな電気化学デバイスの開発につながるとみられている。
電気エネルギーと化学エネルギーを変換する電気化学デバイスとしては、電池やキャパシター、センサーなどが実用化されている。これらは電解質中のイオンを移動させることで動作するが、このためには電圧を印加する必要がある。
研究グループは今回、磁石を用いてイオン輸送が可能な磁性イオン液体(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート)に注目。この磁性イオン液体を電解質として用いた電気二重層トランジスタを作製し、磁場のみで動作させることに成功した。
開回路電圧(電流を印加していない状態での端子間電圧)を観察するために研究グループが作製した電池は、対向させて配置した金(Au)電極の間に、磁性イオン液体と純水を含む液体電解質を満たしている。これにネオジム磁石(480mT)を用いて外部から磁場を印加できる構造とした。
これにネオジム磁石を用いて磁場を印加すると、塩化鉄イオン(FeCl4-)が引き寄せられ、濃度差に応じた起電力がAu電極間に発生する。開回路電圧は約130mVまでゆっくり上昇することが分かった。磁場を取り除くと、濃度差がなくなり起電力も消滅した。
液体電解中の磁性イオン液体の濃度を変えた実験も行った。この結果、純粋な磁性イオン液体では起電力が観測されず、純水を加えた場合のみ起電力が生じることが分かった。電極周辺の電解質の濃度差によって起電力が生じたことになる。
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