東北大、CNTの原子構造を制御する合成手法開発:(6,4)ナノチューブも初合成(1/2 ページ)
東北大学の加藤俊顕准教授らによる研究グループは、カーボンナノチューブ(CNT)の原子構造を制御する新たな合成手法を開発した。従来手法では合成できなかった(6,4)ナノチューブの選択合成にも初めて成功した。
素子ごとの特性ばらつきを解消、次世代電子デバイス実現へ
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の加藤俊顕准教授、同大学院生で日本学術振興会特別研究員の許斌氏、金子俊郎教授らの研究グループは2017年9月、東京大学澁田靖准教授との共同研究により、カーボンナノチューブ(CNT)の原子構造を制御する新たな合成手法を開発したと発表した。この手法を用いて、(6,4)ナノチューブの選択合成に初めて成功した。
CNTは、グラフェンシートが円筒状になった構造である。特に単層CNTは、構造によって半導体の特性を有することから半導体デバイスへの応用が注目されている。ところが、ナノチューブは、「カイラリティ」と呼ばれる原子構造によって、その物性が決まる。このため、産業用途でナノチューブを用いるためには、原子レベルで構造制御合成する手法を確立することが不可欠となっている。
ナノチューブのカイラリティ制御に関しては、これまでいくつかの研究成果が報告されているという。その1つは、特定の結晶方位を持つ触媒を用いる手法である。この場合は、選択合成できるカイラリティの種類が限定されるという課題があった。
研究グループは今回、結晶方位に比べて自由度の高い表面状態に注目した。より多くのカイラリティ種に対して選択合成が可能な手法の開発を目指し、触媒表面状態制御によるカイラリティ制御合成に取り組んだ。
CNTの合成は、拡散プラズマ化学気相堆積(CVD)法を用いた。これまでと異なるのは、触媒の表面状態を制御するために、合成の前段階で触媒を高真空下で加熱処理するプロセスを新たに導入したことである。放射光による構造解析などを行ったところ、触媒前処理プロセスで微量の反応性ガスを注入することにより、触媒表面の酸化度を精密に制御できることが分かった。
この手法を用いてナノチューブ合成を行い、合成されるカイラリティと触媒表面状態の関係を実験で明らかにした。具体的には、酸化コバルトが支配的な前処理なしの触媒と、前処理で50%程度を還元したコバルト触媒を用い、同一条件でそれぞれナノチューブ合成を行った。
この結果、前処理をしない触媒は、(6,5)ナノチューブが支配的であった。これに対して、前処理を行い50%程度の還元を行った触媒は、(6,4)ナノチューブの成長が著しく促進されることが、初めて明らかとなった。
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