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東北大、CNTの原子構造を制御する合成手法開発:(6,4)ナノチューブも初合成(2/2 ページ)
東北大学の加藤俊顕准教授らによる研究グループは、カーボンナノチューブ(CNT)の原子構造を制御する新たな合成手法を開発した。従来手法では合成できなかった(6,4)ナノチューブの選択合成にも初めて成功した。
(6,4)ナノチューブの選択合成にも成功
さらに、第一原理計算と理論モデルによる詳細な検討を行い、触媒の表面酸化度とカイラリティ選択性発現の起源を検証した。この結果、表面酸化度を低下させるとナノチューブと触媒との結合エネルギーが増加した。これにより、最も効率よく合成されるナノチューブの直径と、アームチェア端からのカイラル角が、それぞれ小直径側と高カイラル角側へ変化することが、理論計算により明らかとなった。
この直径とカイラル角のシフト方向は、実験で得られた(6,5)から(6,4)へのシフト方向と極めて近く、前処理によるカイラリティ選択性が、触媒表面におけるナノチューブとの結合エネルギーの違いによって発現することが分かった。
触媒表面状態とカイラリティ選択性の発現機構。(a)は第一原理計算に用いたナノチューブと触媒構造のモデル図、(b)は計算で求めた(6,5)と(6,4)ナノチューブおよび、酸化コバルトと還元コバルト触媒の結合エネルギー、(c)は理論式により算出したナノチューブ合成効率のカイラル角依存性、(d)は(6,5)から(6,4)ナノチューブへのカイラリティシフトに関する直径とカイラル角の関係図 (クリックで拡大) 出典:東北大学
今回は、触媒表面状態を精密に制御する手法を新たに開発すると同時に、この手法を用いて(6,4)ナノチューブの選択合成にも成功した。この(6,4)ナノチューブは、他のカイラリティに比べて直径が小さく、バンドキャップが広い半導体特性を示すという。量子効率が最も高い構造であることも理論的に予測されているという。
研究グループは今回の成果について、ナノチューブのカイラリティが自在に制御可能となる。これによって、素子ごとの特性ばらつきを大幅に抑えることができ、ナノチューブを活用した超高性能電子デバイスの実用化が期待できる、という。
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