透過電子顕微鏡画像から結晶欠陥を容易に検出:産総研らが画像処理技術開発(1/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)の津田浩総括研究主幹らは、結晶構造の透過電子顕微鏡画像から、原子レベルの欠陥を検出する画像処理技術を東芝デバイス&ストレージと共同開発した。
GaN半導体デバイスなどの欠陥分布を可視化
産業技術総合研究所(産総研)分析計測標準研究部門の津田浩総括研究主幹、同部門で非破壊計測研究グループの李志遠主任研究員と王慶華研究員および、東芝デバイス&ストレージは2017年9月、結晶構造の透過電子顕微鏡画像から、原子レベルの欠陥を容易に検出できる画像処理技術を共同開発したと発表した。
津田氏らの研究チームは今回、欠陥検出のためにモアレ稿を利用した。結晶の原子配列を規則的な格子と見なし、サンプリングモアレ法を用いてモアレ縞を作成した。モアレ縞は結晶格子を拡大した模様に相当するという。このため、格子が変形するような転位(結晶中に含まれる線状欠陥)が存在する箇所には、モアレ縞に不連続な変化が表れると考察し、シミュレーションと実験によりそれを検証した。
研究チームはまず、Y軸格子に4つの転位を挿入した二次元格子配列像を作製した。また、実際の電子顕微鏡画像を模擬するため、ノイズを重ねた解析画像も用意した。この解析画像をフーリエ変換フィルタリングすると、X軸方向とY軸方向に分離した格子像が得られる。格子間隔が比較的大きいY軸格子像からは4つの転位を観察することができたという。
格子間隔が狭い場合でも転位の検出を容易にするため、フーリエ変換フィルタリング処理で得られたY軸格子像を、サンプリングモアレ法で約3倍に拡大した。格子間隔を拡大したサンプリングモアレ縞の位相図を観察すると、モアレ縞の終点や分岐点として、目視でも転位を検出することができた。しかも、画像処理によってこれらの検出を自動的に行うことができる。このため、電子顕微鏡画像全体で、転位の数や分布を簡単に評価できることが分かった。
この画像処理技術を、窒化ガリウム(GaN)半導体の透過電子顕微鏡画像に適用し、転位の検出を行った。解析に用いたGaN半導体はサイズが48×54nmで、保護層や厚み34nmのGaN層、同14nmの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層および、バッファー層で構成されている。GaN層のX軸の格子間隔は0.27nm、Y軸の格子間隔は0.50nmである。
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