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透過電子顕微鏡画像から結晶欠陥を容易に検出:産総研らが画像処理技術開発(2/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)の津田浩総括研究主幹らは、結晶構造の透過電子顕微鏡画像から、原子レベルの欠陥を検出する画像処理技術を東芝デバイス&ストレージと共同開発した。
X軸格子は4倍に、Y軸格子は2.7倍にそれぞれ拡大
透過電子顕微鏡画像をフーリエ変換フィルタリング処理したX軸とY軸の格子像は、格子間隔が狭いためそのまま目視で転位を検出するのは難しい。そこで、サンプリングモアレ法を適用し、X軸格子とY軸格子のサンプリングモアレ縞の位相図を得た。この処理を行うことで、X軸格子は4倍に、Y軸格子は2.7倍にそれぞれ拡大され、転位を示すモアレ縞の終点や分岐点は明瞭となり、目視で確認できるようになったという。
転位分布図から、Y軸格子には多くの転位が見られた。GaN層では中心部の転位が少なく、保護層やAlGaN層との界面近くに多くの転位が存在している。AlGaN層では、均一に転位が分布しており、その密度は他の層より高いことが分かった。X軸格子の転位は、GaN層とAlGaN層の界面に集中していることなどが明らかとなった。
次世代半導体プロセスの改善に期待
今回の研究成果によって、広い領域の透過電子顕微鏡画像から、効率よく結晶欠陥を検出し、その分布を可視化することが可能となった。この技術を活用することで、次世代半導体デバイスの製造プロセスをさらに改善できるとみている。
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