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車載レーダーの限界はアナログへの回帰で超える米スタートアップが開発中(1/2 ページ)

米スタートアップのMetawaveは、車載レーダー技術を手掛けている。既存の車載レーダーの性能の限界を超える鍵は、アナログビームフォーミング技術だという。

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既存の車載レーダーの限界を超えるには?

 自動運転車の状況認識能力を高めるには、さまざまな種類のセンサーを装備する必要がある。多くの自動車メーカーがそう考えてはいるものの、各種センサーの品質は明確には分からない。例えば、現在のビジョン、ライダー、レーダーは、満たすべき性能基準をどれくらい上回るものなのだろうか。

 米国カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くXeroxの「PARC(パロアルト研究所)」からスピンアウトしたMetawaveは、自動車業界で従来のレーダーの“限界”と思われてことを変えることができると考える。現在の車載レーダーは、遠くの対象物を捉えて識別することができず、高速道路を走行する場合にも十分対応できる処理速度で動作しているとは言い難い。

 つまり、現在の車載レーダーは、カメラやライダーが捉えられる対象物を捉えることができない。唯一の利点は、あらゆる天候下で動作できることくらいだ。

 Metawaveは2017年1月に設立され、メタマテリアルレーダー、アンテナの商用化に向け、PARCから独占的ライセンスを受けて“フルレーダーパッケージ”を開発している。同社は、2018年1月に米国ラスべガスで開催される「CES 2018」でプロトタイプを披露する計画だという。

 メタマテリアルは、ソフトウェアで制御された小型の工学構造で、プリント基板上に配置される。以前は軍事用途に限定されていた、はるかに大きく、強力で、高額なシステムでのみ可能だった方法で、電磁ビームを操作できるようになったという。

 Metawaveは、現在の車載センサーの問題に関して、NXP SemiconductorsやInfineon Technologies、Texas Instrumentsなどのサプライヤーが設計したレーダーチップを非難しているわけではない。事実、Metawaveのフルレーダーパッケージはレーダーチップに依存していない。同社はむしろ、アンテナを含むレーダーセンサーのビームフォーミング技術で、解像度と速度に問題が生じることを問題視している。

アナログへの回帰

 MatawaveのCEO(最高経営責任者)を務めるMaha Achour氏は、「業界がレーダープラットフォームをアナログに戻すときが来た」と考える。同氏は、「われわれはアナログの世界で生きている。自動車も同じだ。Metawaveは、軍事用途向けの複雑で高額な製品ではなく、手頃な価格の高性能アナログレーダープラットフォームの開発を目指している」と述べている。


Metawaveのアナログレーダー技術は、電気的に制御可能なアンテナに基づいている。2個のポートを備えた単一のアンテナを使う。1個のポートは送受信経路に、もう1個はMCUに接続される 出典:Metawave(クリックで拡大)

 Achour氏によると、Metawaveは単一のアンテナを使用することで、ビームを操作して水平方向と垂直方向に動かせるアナログレーダーを設計している。そのため、より広い視野から非常に狭い円錐状に、1度の角度まで正確にビームを調整できるという。同氏は、「操作は非常に速く(ミリ秒単位ではなく、マイクロ秒単位で)行うことができる」と述べている。

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