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誰も知らない「生産性向上」の正体 〜“人間抜き”でも経済は成長?世界を「数字」で回してみよう(44) 働き方改革(3)(4/10 ページ)

「働き方改革」に関連する言葉で、最もよく聞かれる、もしくは最も声高に叫ばれているものが「生産性の向上」ではないでしょうか。他国と比較し、「生産性」の低さを嘆かれる日本――。ですが、本当のところ、「生産性」とは一体何なのでしょうか。

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ここ2000年における日本のGDPをたどる

 ここで、成長率を実感するために、ここ2000年くらいの日本のGDPの変化を見ていただきたいと思います。


出典:http://www.ggdc.net/maddison/other_books/HS-8_2003.pdf

 ネットの掲示板を見ると、「日本は、これ以上、経済成長しなくても良いのではないか」という意見が多く見られます。ですが、ゼロ成長というのは、“縄文や弥生時代から江戸時代にかけての停滞感”に相当するのです。

 例えば、江戸時代のドラマを例として考えれば、3代将軍家光の時代のドラマのセットと15代(ラスト)の慶喜のセットに、差異がないことを気にする視聴者はいないと思います(江戸時代は、265年間続いたので、(1+0.0041(0.14%))^265年 = 2.8倍程度は生活水準は良くなっているはずなんですが)。

 明治維新から、日本経済はダイナミックに動き出し、ここ150年間くらいは、"経済成長率2%"くらいの世界を生きてきました。

 その中では、高度成長期というとんでもない成長率をたたき出した時期もありました。そして、これが、現在の日本人に、無用な「成長幻想」を与えている、という事実があります。

 では、ここで、この成長率というものがどういうものか見ていただきたいと思います。

 例えば、成長率2%とは、35年後(ざっくり1世代交代)に2倍ほど豊かになっている社会(あるいは、収入が2倍になっている社会)です。これは、自分たちの労働意欲や存在意義を確認するのに、キリの良い数値であり、全世界的にもこの"2%"という数値は頻出しています。

 ところが、わが国は、1955年〜73年の約20年にわたり,経済成長率(実質)年平均10%前後の高い水準で成長を続けました。これは、20年間で6倍近い豊かさを手に入れたことになります(ちなみに35年間続いていたら21倍豊かな生活になっていたハズ)。

 日本は、こんなむちゃくちゃな成長をさせられた後、今なお、成長を課せられている訳ですから、正直、かなり苦しい状況にあるとも言えます。

 高度経済成長期は、日本史におけるイレギュラーな期間であったとして除外して、ここからは1980年以後の1世代分(35年間)の状況で、日本の経済成長率を俯瞰してみたいと思います。

 やっぱり、上のグラフからも"平均2%"が算出されることが分かります。そこで、今回は、"経済成長率2%"を1つの指標として、論を進めていきたいと思います。

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