誰も知らない「生産性向上」の正体 〜“人間抜き”でも経済は成長?:世界を「数字」で回してみよう(44) 働き方改革(3)(5/10 ページ)
「働き方改革」に関連する言葉で、最もよく聞かれる、もしくは最も声高に叫ばれているものが「生産性の向上」ではないでしょうか。他国と比較し、「生産性」の低さを嘆かれる日本――。ですが、本当のところ、「生産性」とは一体何なのでしょうか。
「Gross katu-Don Product」で考えてみよう
さて、今回のコラムの事前調査で、私は、経済成長率、人口、イノベーション、そして、正体不明の「生産性」なるものを勉強してみたのですが、これらは、相互に複雑に絡みあっていて、私にはほとんど理解できませんでした。そこで、今回もエンジニアリングアプローチで、少しずつ整理しながら考えていくことにしました。
まず、生産性を語る数値として、私たちの間で最も有名な国民総生産(GDP(Gross Domestic Product))について、カツ丼総生産(Gross katu-Don Product)を例として簡単に説明します。
カツ丼を作ることによって生み出された価値は、そのカツ丼の販売価格から、カツ丼に使った原材料(+ガス代など)の値段の合計を引き算したものです。上の例では、カツ丼を作ることで、313円の価値が突然、空中に「ポン!」と出現したようなイメージになります。
日本中で、毎日、こういう価値が「ポン!」「ポン!」「ポン!」と発生し続け、それが積もり積もって、1年間で528兆円の価値が出現する訳です。カツ丼を食べる人が多くなって、カツ丼を作る人が多くなればなるほど、GDPも大きくなっていくのが分かります。
650円のカツ丼が、ある特殊な「カツ丼イノベーション製法」によって(原材料の価格はそのままで)、5万円を出しても食べたいと思わせるような、ものすごく美味な料理になれば、空中に「ポン!」と出現する価値は4万9663円にもなり、その分、GDPも大きくなっていきます(高価格化によってカツ丼消費者が減る、ということは今は忘れる)。
今の話を踏まえた上で、今回は、超基本的な経済学の数式を使って、これらの要素をバラバラに取り扱えるようにしてみました。
上記(1)の基本式は簡単です。人口に、各個人の有する生産性の平均値を乗算するだけのことです。一方上記(2)の基本式も、全要素と労働と資本を乗算すれば、生産性が出てくるという超有名な式です(αとβは、労働者と、工場の設備への投資比率、という理解で結構です)。
この基本式(1)と(2)を強引にまとめて、時間に対する変化率を、以下のような式として乱暴に定式化してみました。
この式の内容が示すことは、成長率(GDPの成長率)をプラスにするには、毎年、新しい工夫を続けて、毎年、新しい人口を増やし続け、毎年、新しい生産性を上げ続なければならないということ ―― つまり、休んだら負け、ということです。
さて、この式が信用できるかどうか、実測値を使って検証してみました。
これは、1980年からの人口の増加率(ここでは減少率と言うべきか)と、前述のGDPの変化率を重ねて表示したものです。GDPの変化は、毎年、コロコロと、しかも激しく変動し続けるので、正直、判断しかねるのですが、もし「バブル」と「リーマン」(上下に突出している赤線)がなければ、おおむね相関しているようにも見えます。
どっちにしても、今の私には、代替のアイデアがあるわけでもないので、今回はこの式で押し通すことにします*)。
*)厳密には、各項には係数(定数)が必要だと思うのですが、今回、係数は関数の内部に内包されているものと仮定して話を進めます。
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