Bluetoothの認証情報、IoTブリッジで共有:端末が移動しても再認証が不要に
京都大学とロームの研究グループは、無線通信規格である「Wi-SUN FAN」とBluetooth機能を搭載したIoT(モノのインターネット)ゲートウェイを用いて、Bluetooth搭載機器の利用者が広範囲に移動しても、接続の再認証を行うことなく情報を伝送できる通信システムを開発した。
Bluetooth搭載機器で広範囲の情報収集を可能に
京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授らによる研究グループとロームの内貴崇氏らによる研究グループは2017年10月19日、無線通信規格である「Wi-SUN FAN(Field Area Network)*)」と「Bluetooth」機能を搭載したIoT(モノのインターネット)ゲートウェイを用いて、Bluetooth搭載機器の利用者が広範囲に移動しても、接続の再認証を行うことなく情報を伝送できる通信システムを開発したと発表した。
*)Wi-SUN Allianceが、Wi-SUNを屋外で利用することを目的として策定した無線規格。IPv6で多段中継(マルチホップ)が可能。2016年5月に技術仕様バージョン1が制定されている。
開発した通信システムは、データをクラウドに上げるための基地局用IoTゲートウェイと、複数のデータ中継用IoTブリッジなどで構成される。新たに開発したデータ中継用IoTブリッジは、Wi-SUN FAN対応通信モジュールやBluetooth対応通信モジュールを内蔵している。
Wi-SUN FAN対応通信モジュールは多段中継機能を備えており、複数のIoTブリッジを中継して、離れた場所に設置された基地局用IoTゲートウェイに接続することが可能である。IoTブリッジは、通信の中継機能に加えて、照度や温度、湿度などを自ら測定しそのデータを送信することもできる。
認証情報をIoTブリッジで共有
開発した通信システムの基本動作はこうだ。Bluetooth対応のIoT機器はまず、通信エリア内にあるいずれか1台のIoTブリッジと接続し、認証情報のやりとりを行う。認証情報はその後、Wi-SUN FANを用いて、データ中継用IoTブリッジ間で共有される仕組みである。これによって、Bluetoothに対応したIoT機器の利用者が、最初に接続したIoTブリッジのカバー範囲とは別のエリアに移動しても、移動先でBluetoothの再認証を行わずに、他のIoTブリッジと通信して、収集したデータをクラウドに伝送することが可能になるという。
研究グループは、開発した通信システムを用い、エー・アンド・ディ製のBluetooth対応ウェアラブル機器「UW-302BLE」とBluetooth対応マルチセンサー携帯型自動血圧計「TM-2441」を利用した接続実験を行った。この結果、血圧脈波など収集した生体信号をクラウド上に伝送できることを確認した。
なお、本研究は、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のプログラム・マネジャーを務める原田博司氏の研究開発プログラムの一環として進められたもの。
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