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モノマネする人工知能 〜 自動翻訳を支える影の立役者Over the AI ―― AIの向こう側に(16)(4/10 ページ)

最近の機械翻訳の発展には目を見張るものがあります。なぜ、ここまで進化しているのでしょうか。AI(人工知能)による翻訳、通訳を取り上げ、その発展の理由を探ってみると、その根底には、あるパラダイムシフトが存在していたことが分かりました。

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AIの進化で翻訳/通訳の仕事がなくならない理由

 しかし、私は『AIよって翻訳/通訳の仕事がなくなる』ことについては、ネガティブなのです。

 理由は3つほどあります。

(第1の理由)

 まず、「私たちが完璧だ」と見えるような日本語→英語の翻訳文が、英語圏の人間からすると、「気持ち悪い」と感じる文章のようなのです。

 実は先日、英語で執筆した論文を学会に提出する前に、英文チェックを、外部の会社に依頼したのですが、私の論文の英語の品質について"poor(5段階評価の2くらい)"の評価が付いて戻されてきて、非常に不快な気分になりました。

 同時に『なんで、発注者の提供物の品質に「ケチ」……もとい「評価」を付けて戻してくるのだ?』と、疑問に思いました。

 少し考えてみたのですが、―― 『万一、お客さまの論文が、学会に採択されなくても、それは、うちの会社(外注会社)の、英文チェックの品質が悪いからじゃないんだからね。そこんとこ、ヨロシク〜〜』 ―― と、あらかじめ「逃げ」を打たれたような気がします。

 ただ、ぶっちゃけて言うと、私、今回の英語の論文は「Google翻訳を使い倒して執筆した」ものでしたので ―― Google翻訳に文句を言えよ! ―― と、(理不尽な)抗議をしたくなりました。

 しかし、実際のところ、今回のGoogle翻訳の結果に対して、(ここが大切なのですが)私が違和感を覚えることは、ほとんどなかったのです。もちろん、明らかな誤訳に対しては、自分で修正しましたが、全体として、"poor"と評価されるような重大な瑕疵(かし)があったとは、いまだに思えません。

 ここで1つの疑問が湧きました。

 Google翻訳は一体「誰」に向けて、英語の翻訳結果を出力していたのか?

 もしかして私(あるいは日本人)にとって違和感のない英語を出力するよう、Google翻訳は、自己学習をしてしまったのではないか? という疑義が生じてきたのです。


画像はイメージです

 何しろ私は、Google翻訳の助けを借りて、毎日の日記の翻訳も(趣味で)やっているので、「世界の人間のための英語」ではなく、「江端のための英語」を作っていたのではないか……とも考えられるのです。まあ、そのような可能性は限りなくゼロに近いとは思うのですが、モヤモヤした気持ちは残り続けました。

 しかし、ある時、はたと、この「違和感」を簡単に検証する方法があることに気が付きました。Google翻訳を使って、英語→日本語変換をしてみて、私が「違和感」を感じられるかどうかを検証してみれば良いのです

 そこで今回、アニメ「Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)」の英語の書き込み掲示板のコメントを、Google翻訳で日本語に変換してみました。

 実験結果:すごく気持ち悪かった

 その翻訳結果の日本文は、散々なものでした。もちろん、"Steins;Gate"の内容を熟知しているこの私には、「何を書いているのか」を理解できたのですが、「気持ちの悪い日本語訳」であることは否定できませんでした。

 ―― なるほど、私の論文は、こういう風に見えているのか。そりゃ"Poor"を付けたくもなるだろうな

と、納得したのです。

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