1MビットFeRAM、モバイルやIoT機器への応用も:ラピスが2017年12月から量産
ラピスセミコンダクタは、1Mビットの強誘電体メモリ(FeRAM)のサンプル出荷を開始し、2017年12月には量産を開始する。モバイル機器やIoT(モノのインターネット)機器への適用も視野に入れている。
1MビットのFeRAM
ラピスセミコンダクタは2017年10月27日、1Mビットの強誘電体メモリ(FeRAM)「MR45V100A」「MR44V100A」を開発し、同年12月から量産出荷を開始すると発表した。スマートメーター、計測機器、医療機器、金融端末といった、高速なログデータ取得や緊急時の高速バックアップが必要な用途に向ける。現在サンプル出荷中で、サンプル価格は700円(税別)。生産拠点は、前工程がローム本社(京都府京都市)、後工程がROHM Electronics Philippines(フィリピン)となっている。
MR45V100Aは、インタフェースがSPI、電源電圧範囲は1.8V〜3.6Vで、動作周波数は最大40MHzである。電力が不安定な環境下で、急な電圧低下があっても安定した高速動作が可能だという。一方のMR44V100Aは、インタフェースがI2Cで、速度を必要としない用途に適しているとする。電源電圧範囲は1.8V〜3.6Vで、動作周波数は3.4MHzまたは1MHz。読み書き耐性は1兆回。
モバイル用途を視野に入れ、データ大容量化に伴う消費電力の増加を抑えるため、スタンバイモードを改良し、ラピスセミコンダクタのFeRAMとしては初めて、スリープモードを搭載した。
スタンバイモード時は、動作が不要な回路の電源回路の遮断を徹底し、動作復帰時は必要な部分のみ高速で初期化する。これにより、10μA(平均値)と、1MビットのFeRAMでは低いスタンバイ電流を達成したという。スリープモード時の消費電流は平均で0.1μA。スリープモードからの復帰は約100マイクロ秒である。
ラピスセミコンダクタは、2011年から、容量やインタフェースが異なるFeRAMの製品ラインアップを拡充してきた。主にプリンタ、車載アクセサリー、FA(Factory Automation)機器などに採用されてきた。今回発表した2製品は、電池駆動のモバイル機器にも搭載できるよう、大容量、広い電源電圧範囲、高速動作、待機電流や休止電流の削減などに注力して開発したという。
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