“FPGAaaS”は業界に浸透するのか?(後編):試行錯誤を始めた関連メーカー(2/2 ページ)
「FPGAaaS(FPGA-as-a-Service:サービスとしてのFPGA)」というコンセプトが登場する中、FPGA業界に関わるメーカーは、フレームワークの構築やパートナーシップの締結などに向けて試行錯誤している。
ハードウェアのビジネスモデルを変える必要も
FPGAは複雑すぎてプログラミングが難しいことは、業界でも認識されている。現在はまだ、ビルドすればFPGAアクセラレーションが利用できるという段階には達していない。Monboisset氏は、「迅速な対応が必要であることは、Intelも認識している」と述べている。同氏は、「Intelは自社製品ベースのボードを設計してクラウドサービス市場への展開を進めているため、Xilinxよりも一歩先を行っている」と見ている。
451 ResearchのAbbott氏は、AccelizeとIntelのパートナーシップが強固なクロスインダストリーエコシステムの構築に役立つと考えている。同氏は、「Intelがエコシステムの構築を目指していないのであれば、競争を避けるためにAccelizeを買収するという選択もできるはずだ」と述べている。
だが、IntelにAccelizeのようなビジネスモデルが実施できるのだろうか。
Freund氏は、「それは現実的な選択肢ではない」と指摘する。同氏はその理由として、まず「現時点では市場が小さいこと」を挙げた。2つ目の理由は、「Intelが同市場に真剣に取り組むのであれば、AccelizeのようにXilinxをサポートする必要があるが、Intelはそうする気はないと思われることだ」と述べている。同氏は、「顧客は、ベンダーを固定せずに選択できることを望んでいる」と語っている。
Intelは、Accelizeのようなビジネスモデルを手掛けるとすれば、さらに大きな課題に直面すると予想される。
Abbott氏は、「Intelは、NVIDIAやARM、AMDなどの競合他社のアーキテクチャを含む別のアクセラレーションアーキテクチャにも同社のツールを開放する必要が生じる。だが、同社がこうした譲歩をする可能性は低いと思われる。例えばIntelは、FPGAをGPUの代替品と捉えている。しかし、GPUはデータの並列処理を含むあらゆるタスクに強く、FPGAの代わりとして使われることはない」と述べている。
同氏の見解によると、FPGAは(同一プロセッサ上で実行されるエンコーディングや暗号化のように)機能的な並列処理や、クラウドのTPCオフロードやイーサネットなどの重い入出力タスクを必要とする市場のシェアを獲得すると考えられる。
「サービスとしてのチップ(Chip-as-a-service)」への移行が進めば、半導体企業の事業はどのように変わるのだろうか。新しい「サービスとして」のビジネスモデルがもたらすのは、ハードウェアビジネスの変化だ。
Abbott氏は、「半導体ベンダーは、導入への障壁をなくすために、ヘテロジニアスなコンピュータ構成とシステムソフトウェア層の新規格をサポートする必要があり、現在のエコシステムパートナーは、単一のアーキテクチャに固執するのではなく、クラウドアクセラレーションの幅広い市場に対応しなければならない」と述べる。
同氏はさらに、「チップ固有の開発ツールは、オープンなフレームワークにプラグインすれば適合性を保持できるようにする必要がある」と述べている。
半導体業界は、こうした変化への対応がほとんどできていない。
Abbott氏は、「サーバメーカーや、DellやHewlett Packard Enterprise(HPE)のようなホワイトボックスのPCメーカーは既に、さまざまな種類のアクセラレーターを組み込めるような設計の新世代サーバの開発に取り組んでいる」と半導体業界に対して警鐘を鳴らしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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