中国勢が目指すマイコン市場、その新たなるルート:製品分解で探るアジアの新トレンド(22)(2/3 ページ)
AppleやSamsung Electronicsなど、大手メーカーの製品に、中国メーカーのシリアルフラッシュメモリやARMマイコンが搭載され始めている。こうした傾向から、中国メーカーが開拓しつつある、マイコン市場への新たなルートが見えてくる――。
設計力の高さで注目される中国Gigadevice
図1は、2017年に弊社が分解した製品のほんの一部である。左からハイレゾリューション・オーディオ・プレーヤーである「PAW Pico」、マウスコンピュータの顔認証カメラ、再生専用DVDプレーヤー、大型量販店で販売されるセカンドテレビ、中国製のポケットドローンである。これらは全て日本でも容易に入手でき、かつそこそこの数量が販売されているものだ。これらに共通するのは、シリアルフラッシュメモリに中国Gigadeviceの製品が採用されている点である。
弊社の調査製品では、さらに数多くの製品でGigadeviceのシリアルフラッシュメモリが搭載される情報がそろっている。現在、最も目にするチップメーカーの1つと言ってもよいほどだ。
Gigadeviceは2005年創業の中国メーカーで、現在はGlobal NOR Flash Marketのトップ5にも選出されるメーカーになっている。また2014年には中国ICデザイン賞を受賞、知名度と採用事例とともにデザイン力の高さも注目されている。シリコンバレーや韓国、台湾での経験者も多い。Gigadeviceのオフィスは本社が中国北京にあり、上海、深センなど中国内に数拠点、海外には台湾、韓国、米国、英国にもオフィスを持ち、日本では新横浜にオフィスを構えている。
図2には、図1のようなややニッチな製品ではなく、世界的なブランド商品の内部でのGigadeviceのシリアルフラッシュメモリの採用事例を掲載する。米AMDのGPUグラフィックボード「RADEON RX470/480」、Samsungが2017年に発売したフラグシップスマートフォン「Galaxy S8」のOIS(光学式手振れ補正)カメラモジュール、Appleの「Macbook Air」のSSDカードにもGigadeviceのチップが組み込まれている。
これら世界的なメーカーの製品には、高い品質と性能が要求される。中国製半導体は「安かろう、悪かろう」である、という偏見にも似た意見が2017年現在もないわけではないが、上記のような大手メーカーのトップブランド製品にも中国製のチップが入っているのは、まぎれもない事実だ。
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