意味不明の「時短」は、“ツンデレ政府”のSOSなのか:世界を「数字」で回してみよう(45) 働き方改革(4)(10/11 ページ)
「働き方改革」において、「生産性」に並ぶもう1つの“代表選手”が「時短」、つまり「労働時間の短縮」ではないでしょうか。長時間労働の問題は今に始まったことではありませんが、どうしても日本では「時短」がかなわないのです。それは、なぜなのでしょうか。
政府よ、正直に言ってくれ
それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。
【1】政府主導の「働き方改革」の重要項目の1つである「時間外労働」について考えてみました。
【2】今回も、政府の資料に記載されている「時間外労働」の内容を理解できなかったので、「時間内労働」について法律から調べてみました。そして、我が国においては、「8時間以上の労働は、全て違法行為」であることを知って、ビックリしました。
【3】しかし実際には、この大原則には例外があり(36協定)、さらにその例外もあり(36協定の例外)、実質的には月100時間労働も可能となる仕組みが組み込まれていることが分かりました。
【4】これらの法律の根拠となっている「8時間労働」のルーツを求めて調査したのですが、「人間が過労死しない範囲の労働時間の経験値」から算出されたものであり、その後は、これといった理由なく続いてきたものであることが分かりました。
【5】労働時間短縮、いわゆる「時短」について、国家、会社、そして私たち個人の観点から、その意義と効果について検討を行いました。
【6】まず「時短が生産性を向上させる」という内容が「まやかし」であることを、生産生の定義の取り違えと、簡単な数(割り算)で示しました。
【7】一方、比較的簡単な方式で生産性を上げる方法として、単純な生産力曲線を使って「(品質や機能への)こだわり」を2割捨てれば、生産性が軽く2倍になることを説明しました。また、「成果主義が、時短を推進する」という内容が「デタラメ」であることを、簡単な事例で説明しました。
【8】時短の問題点を明らかにするために、あえて「長時間労働を肯定するロジック」を、会社や個人の観点からピックアップしてみました。その結果、「時短」を推進するモチベーションを発生させるものが、見当たらないことが分かりました。
【9】時短を妨害する人物の特定を、内閣府の「経済財政白書」のデータから読みとり、
例えば、「シニアで製造業の男(私)」のような奴に、その傾向が顕著であるとを示しました。
【10】最後に、会社や国家や個人が「時短」よって得たいことを整理してみました。いずれのケースも、「時短」を現場主導で推進することは大変困難であり、行政指導や立法化が必須であることを、かなり乱暴な言葉で表現しました。
以上です。
さて、私は今回、「時間外労働」転じて「時短」に関して、さまざまな書籍や記事を読みましたが、これらの記事で一貫して分からなかったことは、「誰のための時短なのか」を明確にしない記事の多さです。
政府、会社、個人において、時短の意義は当然変わってくるはずなのですが、どれもこれも、『お前ら、どいつもこいつも、政府(広報)の犬か』としか思えませんでした。
まるで、『自社の商品の店頭販売をしている販売員が、商品のメリットを一つも提示せずに、商品を売っている』ような記事ばかりです ―― 誰が、そんな商品買うか。
政府は政府で、正直に「仕事の量を減らして、もっとつらい仕事(育児とか介護)とかに従事してくれ。頼む。もう行政サービスはイッパイイッパイなんだよ」と、素直に言って欲しいです。私だって、この国を大切にしたいという気持ちはあるのです(もっとも私個人程には、大切ではありませんが)。
いずれにしても、「ライフワークバランス」などという横文字を乱用して、この問題に対する本音を煙(けむ)に巻くのは、正直、感心しません。
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