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意味不明の「時短」は、“ツンデレ政府”のSOSなのか世界を「数字」で回してみよう(45) 働き方改革(4)(2/11 ページ)

「働き方改革」において、「生産性」に並ぶもう1つの“代表選手”が「時短」、つまり「労働時間の短縮」ではないでしょうか。長時間労働の問題は今に始まったことではありませんが、どうしても日本では「時短」がかなわないのです。それは、なぜなのでしょうか。

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「例外の例外」まである労働基準法

 ただ、この労働基準法等の違法行為の対象は、労働者(運転した人)ではなく、使用者(運転させた人)という点になります。

 もちろん、私たちは、このような8時間の原則を厳密に適用している会社を知りません。それは、例外規定があるからです。これが36(サブロク)協定、と呼ばれているものです。

 法定速度40km/hの道であっても、理由、内容、人数、休日労働について、事前に申告しておけば、一定の範囲内で速度違反を見逃す、というものです。

 ところが、この36協定について、労働者の4割の労働者がその存在を知らず、使用者の半分が、この届け出をサボっているという話があります(もちろん、法律違反ですから、刑事罰「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の対象です)。

 しかし、36協定には、さらにその例外(つまり例外の例外)があります。

 「働き方改革実効計画」の中の記載を読んで、なんとか理解しました(と思います)が、この内容を正確に伝えるのは、コンピュータのアルゴリズムの説明をするより難しいと感じました。

 そこで、ムチャを承知で、最大級の悪意を込めて、ワーストケースだけを取り出して以下のようにまとめました。

(1)使用者は労働者を、1日12時間まで合法的に働かせることができる
(2)使用者は労働者を、ひと月100時間まで合法的に働かせることができる

 データ統計的に完全に有意であると認定されている過労死ライン(80時間/月)を超えても、法律上は合法とされる、というのは、なかなかすごいことです ―― 法定時速40km/hの道路を、100km/hで暴走しても許される世界観です*)

*)残業の作業負荷は、通常の業務時の2倍以上と想定して算出

 わが国は、道路交通法における速度違反の摘発(違反キップの発行)に対して、あんなにも厳格なのに、労働基準法における残業違反に対しては、 ―― 死亡事故(過労自殺)にでもならない限り(メンタル休業くらいでは全然足りない)寛容なのです ―― それはもう、空のごとく広く、海のごとく深く。

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