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デジタル・トランスポーテーション 〜 変わりゆく自動車業界の構造IHSアナリスト「未来展望」(6)(1/2 ページ)

自動運転車の実現は、自動車分野だけでなく、輸送分野の構造までも大きく変える可能性がある。ソフトウェアの重要性がより高まり、ビジネスモデルも、スマートフォン業界のそれに近づいていくと予想される。

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来たる「デジタル・トランスポーテーション」の時代

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 「デジタル・トランスポーテーション」とは簡単に言うと、自律走行(完全自動運転)の実現に向けて、クルマそのものはもちろんのこと、自動車業界の構造、輸送分野までもが大きく変化していくことを意味している。これを「デジタル・トランスフォーメーション」というのが今の風潮だが、ここではあえて「デジタル・トランスポーテーション」と呼び、クルマと輸送に特化して話したい。

 例えば、ITの進化によって、海外ではUber(ウーバー)のような配車サービスが広く普及している。配車や相乗りといった乗車サービスや、従来のカーシェアリングも一般化してきたことで、自動車メーカー、IT企業、通信をはじめとするサービス事業者の立場が、以前よりもフラット化している傾向にある。事実、Uberの時価総額は、BMWを既に上回っているのだ。


自動車メーカーと、配車サービス企業の株式市場評価額 出典:IHS Markit(クリックで拡大)

 一方で日本は、配車サービスもまだそれほど普及しておらず、自動車業界では、相変わらず自動車メーカーの立場が強い状況にある。日本は相乗りや配車サービス(いわゆる白タク)などの乗車サービスに関して規制が強く、自動車産業も自動車メーカーを頂点とするピラミッド構造が長く続いてきたことで、IT企業やサービス事業者が海外ほど優位に立てていない。

 こうした状況がいずれ、「独自の市場」ひいては「ガラパゴス化」を招く可能性も否定できない。ただ、それが“悪い”とは一概には言えないのも事実だ。現に、Appleはスマートフォン(スマホ)市場において垂直統合戦略で勝ち続けている。また、日本が2020年のオリンピック・パラリンピックで商用化を目指しているロボタクシーは、今後の世界市場を占う意味を持つ。

 かつて馬車を主な移動手段として利用していたことから自動車を発明するに至った欧米が、完全な自動運転車の実現に向けて主導していくのは、確かに自然な流れの1つだ。その一方で、長距離移動も輸送も自動車が出現する前には、人間が担ってきた日本もまた、自動運転車を「ヒト型ロボット」と捉えて、主導的役割を担っていくことは十分可能だろう。

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