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バイオ分野でもIoTを、米新興企業が本腰ARMと提携し、SoC開発へ(1/2 ページ)

米国のスタートアップ企業が、バイオロジーの分野でもIoT(モノのインターネット)を加速させようとしている。分子データなどを販売、購入、共有できる、これまでにないデジタルマーケットプレースの構築を目指すという。ARMと協業し、こうした市場を実現するための新しいSoC(System on Chip)も開発中だ。

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バイオ分野のIoT

 米国テキサス州オースティンに拠点を置く新興企業Nano Globalは、「Internet of Biological Things(バイオロジー分野のモノのインターネット/バイオIoT)」の実現に向けて取り組んでいる。同社は、ARMとの提携によってSoC(System on Chip)の開発を進め、スマートフォンから玩具、扇風機、ばんそうこう、医療用機器に至るまで幅広い製品の監視や、病原菌の除去などを実現できるようにしていく考えだ。

 Nano Globalは、デジタルマーケットプレースを構築し、消費者や研究者たちが分子データを購入、販売したり、共有したりできるようにすることを目指しているという。

 同社は、オプティクスやAI(人工知能)を使い、有機体を特定するという手法を採用する予定だという。ブロックチェーン認証を開発することにより、オープンかつグローバルな分子データベースとのやりとりを保護することが可能になるとしている。

 Nano Globalは、まだ初期段階にあるため、同社にとって初となる半導体チップを市場に投入できるようになるのは、1年後になる見込みだ。同社は、ARMの他にも、ごく少数の大学と協業している。Nano Globalが今後、幅広いビジネスモデルを実現していく上で、さらに多くのパートナー提携先を必要としていることが分かる。

 Nano Globalは資金調達も進めていて、投資家Mark Cuban氏の他、ARMの親会社であるソフトバンクと、ソフトバンク・ビジョン・ファンドからも資金提供を受けているようだが、具体的な金額については明かしていない。2018年4月には、もう1つ別の投資ラウンドが終了する予定だという。

 Nano Globalは現在のところ、半導体チップやパートナー企業、資金調達などの詳細に関してほとんど明らかにしていないが、今後の展望については十分に語っている。


Nano GlobalのSteve Papermaster氏

 Nano GlobalとPowershift Groupの両社のCEO(最高経営責任者)を兼任するSteve Papermaster氏は、「われわれは、現実世界の分子データをリアルタイムに提供する、新しい巨大市場を始動させたいと考えている。IoTをはるかに超える規模になるだろう」と述べる。ベンチャー投資企業であるPowershift Groupは、Nano Globalにも資金を提供しているという。

 Papermaster氏は、「このようなマーケットプレースが実現すれば、現在、比較的制約のある専用研究室での作業に依存している医薬品および医療機器の研究を、加速させることができる。このような研究を世の中に出すことができるよう、さまざまな企業との間で、多くの協業関係を構築していきたいと考えている」と述べている。

 新興企業Bloomlifeの共同創設者であり、COO(最高執行責任者)を務めるJulien Penders氏は、「このようなアイデアは非常に重要だが、決して目新しいものではない。手掛けている企業もある。例えばGoogleの親会社Alphabet傘下のVerily Life Sciencesが手掛けたプロジェクト『Baseline』は、人間の健康データを大まかにマッピングすることを試みている。23andMeはDNAの分野で、uBiomeはマイクロバイオーム(微生物)データの分野で、それぞれ同様の手法を採用している」と指摘する。同氏はかつて、ベルギーの研究機関imecで医療技術研究者を務めていた経歴を持つ。

 Penders氏は、Nano Globalについては詳しく知らないとしながらも、「重要なのは、このような取り組みによって、データの品質と信頼性を正確に評価することだ。測定結果の背景を踏まえて、データの取り出しや分析を行うことができるエンドポイントを確立することも重要となる」と述べる。

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