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バイオ分野でもIoTを、米新興企業が本腰ARMと提携し、SoC開発へ(2/2 ページ)

米国のスタートアップ企業が、バイオロジーの分野でもIoT(モノのインターネット)を加速させようとしている。分子データなどを販売、購入、共有できる、これまでにないデジタルマーケットプレースの構築を目指すという。ARMと協業し、こうした市場を実現するための新しいSoC(System on Chip)も開発中だ。

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パートナー企業を模索

 Nano Globalは現在、スマートフォンやウェアラブル機器など、自社のSoCを使用する可能性がある既存製品のメーカー各社との間で、協業関係を構築しようとしている。長期的には、新しい種類の製品として、感染を検知すると自動的に薬剤を放出することができるスマートばんそうこうや、マラリア細胞を検知すると、化学物質を放散して死滅させる貯水タンクなどの開発を目指している。

 Papermaster氏は、「ヘルスケア分野における現在の課題は、『Fitbit』や『Apple Watch』のような製品を開発することではなく、ナノレベルやバイオレベルのコンピューティング性能を実現することにある」と述べている。同氏はかつて、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の科学技術顧問を務めた経歴を持つ。

 またPapermaster氏は、複数のビジネスモデルをサポートできる分子データベースの実現を思い描いているという。

 同氏は、「データが無料の場合もあれば、ユーザーにデータの使用料を支払うプラットフォームもある。環境保護運動において建物や自然食品の認証が行われるのと同様に、人々の健康意識レベルが高まれば、生物学的な安全性や製品の効能などを知りたいと思うようになるだろう」と付け加えた。

 Nano Globalによれば、自社開発のSoCに、通信チップ、光チップ、環境センサーや専用ブロックなどの他、さまざまな種類のARMコアを搭載する予定だという。同社にとって初となる半導体チップは、14nmプロセスまたはそれ以下の技術を適用して製造し、2019年初めには出荷を開始できる見込みだという。その半導体チップを搭載したシステムの開発には、さらにもう1年間を要するとみられる。

 Papermaster氏は、特定のターゲット市場については明言を避けながらも、「最終的には、半導体チップの消費電力を十分に低減することで、エネルギーハーベスティングで動作できるようにしたいと考えている。低価格も実現できるだろう。


画像はイメージです

 同社の従業員は約50人で、この中には、半導体開発者の他、顕微鏡検査や光学、機械学習などの分野の専門家も含まれるという。同社の半導体チップは、推論も可能とみられるため、大学や企業の研究所との協業により、学習可能なモデルを開発することで、生物学的マーカーの実現も追及していくことができるだろう。

 同氏は、「当社のIP(Intellectual Property)は、ソフトウェアが中心になる見込みだが、パートナー企業との間で、ハードウェアの最適化が可能なコンポーネントの開発についても話を進めている」と述べる。

 ARMのIPグループ担当プレジデントを務めるRene Haas氏は、報道向け発表資料の中で、「Nano Globalの技術は、技術の適用によって人々の生活を向上させることが可能なケアを共同で追及していく上で、大きな進歩だといえる。これにより、ヘルスケア分野の複雑な課題を解決していくための、重要な一歩を踏み出すことができる」と述べている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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