JOLED、印刷方式の有機ELパネルを出荷開始:韓国勢には難しい中型を狙う(2/2 ページ)
JOLEDが、RGB印刷方式で製造した21.6型4K有機ELパネルを製品化し、出荷を開始した。最初の製品はソニーの医療関連事業に納品されたという。JOLEDは、韓国勢が採用する蒸着方式では製造が難しい、中型パネル領域を狙う。
1つのプロセスで全てのパネルサイズに対応したい
現時点で、JOLEDが自社の事業として行うのは中型パネル領域だが、パートナーのパネルメーカーに技術を提供するという形(アライアンス戦略)で、大型パネル領域への参入も進めていく。加藤氏によれば、大型TV向けの有機ELパネルの製造に印刷方式を使いたいという問い合わせもあるという。JOLEDは大型化に向け、川幅2000mm以上のワークサイズを実現できる印刷設備についても、開発を完了している。ただし、開発が完了しているのは装置単体のみで、乾燥など前後のプロセスについてはまだ開発を完了していない。
アライアンス戦略については、「詳細は明かせない」(加藤氏)としながらも、「アライアンス戦略で提供しようとしている技術、装置、材料と、JOLEDがこれから事業化する高精細の中型パネル向けの技術、装置、材料は、厳密には同じものではない」と説明する。「つまり、われわれが、大型TV向けとして(パネルメーカーに)提供した技術を使って中型有機ELパネルを製造しようとしても、高精細な製品は実現できないだろう。そのようにして、すみ分けを図っていく予定だ」(同氏)
田窪氏は「われわれの1番の目標は、全てのサイズを同じプロセスで製造できるようにすること」だと強調する。「それができない限り、有機ELディスプレイが液晶ディスプレイに取って代われるほど発展しないだろう。例えば、液晶パネル向けマザーガラスのG6(第6世代)というのは、もともとは32型TVを製造するための基板だった。だが現在は、ほとんどスマートフォン向け液晶ディスプレイがG6で製造されている。つまり、市場の変化にすぐに対応できるような製造プロセスでなければ、発展が難しいということだ」(田窪氏)
1000億円を投資
前述の通り、JDIの石川工場の製造ラインはパイロットラインであり、大規模な量産には対応できない。2019年の量産開始に向けては約1000億円の資金が必要になるとみられていて、田窪氏は「資金調達については2018年3月末までのクロージングを目指し、現在さまざまなところと交渉を進めている」と述べた。
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