ドンキ“衝撃の1万円台PC”、影の立役者は中国製チップだった:製品分解で探るアジアの新トレンド(23)(2/3 ページ)
ドン・キホーテがプライベートブランドのPCとして発売した「MUGA ストイックPC」。本体価格で1万9800円という衝撃の価格を、なぜ実現できたのか。その裏には、実力を伴った中国製チップの存在があった。
安価にするための“工夫”は特にない?
図2にMUGA ストイックPCの内部構造を掲載する。内部はスピーカーやディスプレイを合わせると合計8つの部品で構成されている。その半分に半導体チップが載っている。それらをつなぐ配線までカウントすると部品数は14になる。
現在多くのノート型PCもほぼ同数の部品で構成されているので、MUGAストイック PCが、構成部分で何らかの「新たな工夫」を行って安価にしているわけではないことが確認できた。
メイン基板のサイズは95mm x 70mmと、一般的なPCに比べてかなり小さく、どちらかといえばタブレットなどに使われるサイズの基板である。そこから各種端子、周辺(ディスプレイ、キーボードなどに)に配線されている。いわゆる集中制御がなされているわけだ。
図3は、メイン基板の様子である。メイン基板にはインテルのAtomプロセッサ「Z8350」が搭載されている。Z8350は、14nmプロセスで製造され、4コアCPU+GPU+ディスプレイコントローラーなどを搭載する、数多くの製品で採用されている実績のあるチップだ。ベアボーンPCやタブレット、スティックPCなどでも使われている。基板は片面実装(裏側にはチップなし)で、数多くのチップが搭載されている。
そして、DDR3メモリ(2Gバイト)、ストレージメモリ(32Gバイト)がAtomプロセッサを取り囲むように搭載されている。さらに、Atomプロセッサの電源を制御する電源ICや各種インタフェースを担うチップがAtomを中心に手足を伸ばす形で配置されている。多くは中国、台湾のチップだ。残念ながら、MUGAストイック PCには、日本製のチップが全く採用されていなかった。昨今のタブレットやテレビなどでも中心こそ欧米日チップが使われるものの、手足の部分、いわゆる周辺機能には中国、台湾チップが続々と採用されている。MUGA ストイックPCはそれを体現した構成になっている。
一つ、断っておきたい。中国製が多用されていると聞くと、ネガティブに捉えてしまう方も依然多くいるが、ノートPCを1万円台で提供できることは素晴らしいことだし、この製品は、いわゆるパーソナルな日常ユースには十分なものである。中国製チップは、今や多くの日本製品や欧米製品にも組み込まれているのである!
本製品には、PCとして省略された部品は決してない。必要最低限の機能は全て備わっている。何かを省略して1万9800円ならば、問題はあるだろう。SDカードを使えばストレージは拡張できる。CPUの非力さ、メインメモリの容量の少なさはあるが、セカンドPCと割り切れば、そこそこ使い勝手のよい1台だと思っていただいていいだろう。
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