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オープンIoTからIoSへ、モノからコトへMONOist IoT Forum 東京(2)(1/2 ページ)

EE Times Japan、MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。同セミナーのIoTテクノロジートラックの模様をレポートする。

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2016年に続いて2回目の開催

 EE Times Japan、MONOist、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの産業向け5メディアは2017年12月4日、都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。東京での開催は2016年に続いて2回目となる*)

*)関連記事:IoTが変える「製造業の在り方」「ダントツ」の根幹には何があるのか[MONOist]

 本稿では、特別講演として東洋大学INIAD(情報連携学部)の学部長を務める坂村健氏やジャパンディスプレイ(JDI)でマーケティング&イノベーション戦略統括部 執行役員CMOを務める伊藤嘉明氏が登壇したIoTテクノロジートラックの模様を紹介する。なお、基調講演に登壇したパナソニック専務執行役員でコネクティッドソリューションズ社 社長の樋口泰行氏の講演内容を中心にしたレポートは、MONOistの記事を参照いただきたい。

オープンAPIであらゆるものを連携


坂村健氏

 特別講演に登壇した東洋大学INIAD(情報連携学部)の学部長を務める坂村健氏は、「オープンIoTからIoSへ」をテーマに、IoT(モノのインターネット)の先にあるIoS(サービスのインターネット)に向けた取り組みなどについて講演した。

 冒頭に坂村氏が紹介したのは、中国における「シェアリングエコノミー」への取り組みである。これは、インターネットを介して、企業や個人などが持つ資産やノウハウについて貸し借りをするシステムである。新たなシェアリングサービスが、続々と登場する中で、自転車のシェアリングをする「Mobike」などの事例を紹介した。このサービスの特長として、クラウドを最大限に活用していることや、シェアリングに適した独自の車体設計を行っている点を強調した。

 シェアリングエコノミーが急速に拡大する背景には、中国で急速に普及するモバイル決済システムがあると指摘する。「アリペイ(Alipay)」や「ウィーチャット(WeChat)ペイメント」に代表される、QRコードを使ったモバイル決済システムが、中国で日常化しているという。銀行口座などの裏付けがなくても、身分証番号だけでアカウントを持つことができる。利用者に対するインセンティブなども、クラウド側のプログラムを変更することで対応でき、サービスの改善などを迅速に行える。

 このためには、「API(Application Program Interface)を解放し、自動連携することが重要だ」と坂村氏は指摘する。その一例として配車サービス「Uber」を紹介した。スマートフォンにワンタッチするだけで迎えの車を手配できるシステムである。「APIの先にいるのはモノや人や組織であり、これらがインターネットでつながることが重要だ。さまざまなオープンAPIの連携がIoSとなる」と坂村氏は述べた。

 これ以外にもオープンAPI連携の事例として、ドイツにおける産業政策「インダストリー4.0」、官民が保有するデータをオープンにして活用するための「官民データ活用推進基本法」の施行、などを紹介した。また、公共交通オープンデータ協議会(ODPT)、オープン&ビッグデータ活用地方創生推進機構(VLED)などについても、その活動概況を紹介した。最後に、「文芸理融合」を掲げるINIADの教育方針や、学部創設の狙いなどを語った。

「モノ作りだけではないコト作り」へ


伊藤嘉明氏

 特別講演として登壇した、ジャパンディスプレイ(JDI)でマーケティング&イノベーション戦略統括部 執行役員CMOを務める伊藤嘉明氏は、「第2の創業を迎えたジャパンディスプレイのIoTへのアプローチ」と題して、新たなビジネスモデルによる成長戦略について講演を行った。

 伊藤氏は2017年10月にJDIのCMOに就任した。かつては家電機器メーカーの立て直しに携わったこともある。伊藤氏は冒頭、日本の企業に警鐘を鳴らした。伊藤氏は別の企業に在籍していた当時、2年前のドイツのエレクトロニクスショー「IFA」において、IoTを搭載した冷蔵庫のコンセプトモデルを発表した。

 2017年のIFAでは、IoTを搭載した同様の冷蔵庫が、中国や韓国企業から具体的な商品として発表された。ところがこの場で日本企業からは1社も発表されなかった、と指摘する。「日本企業は、IoTに必要な技術を開発することでは先行している。それを具体的な製品に落とし込んでいくプロセスに大きな課題がある」と伊藤氏は話す。

 高い技術力を持ち、有力な顧客を抱えるJDIにも同様なことがいえるという。そこで伊藤氏は、既存のビジネス領域にとどまることなく、新たなビジネス領域の拡大にも取り組む。その背景には、IoTの浸透によるディスプレイの用途拡大がある。同時にディスプレイ単体から入出力デバイスへと進化させるためのビジネス戦略がある。

 例えば、スマートフォンや車載、デジカメ、医療機器向けなどはこれまで手掛けてきた領域である。これらの用途に加えて、棚札や指紋認証対応のスマートカード、ウェアラブル機器、サイネージ装置などの領域にもビジネスを拡大したいという。指紋センサー、高精細でフレキシブルなディスプレイ、極めて透明度が高いディスプレイ、などがその中核技術、製品となる。必要に応じて、高い技術力を持つ世界の企業とアライアンスを結びつつ、ディスプレイを利用した新たなビジネスモデルを構築したい考えである。

 もう1つ伊藤氏が強調したのが、「モノ作りだけではないコト作り」である。これまでのようにモノを作って販売する「トランザクションビジネス」ではなく、利用期間に応じて料金を支払う(あるいは受け取る)「サブスクリプションビジネス」形態への移行である。一例として、冷蔵庫のドア開閉などを遠隔地からチェックすることで、居住者の活動状態などが分かる「見守りサービス」などの事例を挙げた。

 この他、自動運転車とディスプレイの役割についても述べた。ヒューマンマシンインタフェースとして、大画面で超ワイド化、形状や曲面の自由度が高いディスプレイ、死角をなくす透明ディスプレイ、センサー技術との組み合わせなど、さまざまな技術の進化に対応できる入出力デバイスを提供する考えである。

 「MONOist IoT Forum in 東京」では基調講演や特別講演の他、モノ作り業界に特化したIoTの最新トレンドについて、具体的な事例などを紹介するセッションも実施した。その様子をダイジェストで紹介する。

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