儲からない人工知能 〜AIの費用対効果の“落とし穴”:Over the AI ―― AIの向こう側に(18)(3/9 ページ)
AI技術に対する期待や報道の過熱が増す中、「抜け落ちている議論」があります。それが、AIの費用対効果です。政府にも少しは真剣に考えてほしいのですよ。例えば「荷物を倉庫に入れておいて」と人間に頼むコスト。そして、AI技術を搭載したロボットが「荷物を倉庫に入れておく」という指示を理解し、完璧にやり遂げるまでに掛かるトータルのコスト。一度でも本気で議論したことがありますか?
AIへの投資が過熱する理由
逆から見れば、わが国の行政システムは、経済のプラス成長を前提として運用されており、マイナス成長を想定していないのです ―― 仕方のないことですが*)。
*)このあたりの詳しい話は、もう一つの方の連載で展開します。
ひと言で言えば、わが国の行政システムはマイナスを扱えない電卓のようなものなのです( "3 − 100 = 0"となるような電卓)。
さて、それでは、わが国の現状の経済成長率が、どうなっているかというと ―― ぶっちゃけ、真っ暗です。
上記の「工夫」の項の「イノベーション」に関して言えば、江端独断で、以下のようなものが挙げられそうです。
上記のイノベーションについては、どこでもAI技術が必要とされますが、コンピュータとネットワークの資源を利用する"AI技術"(例:自動翻訳、音声認識)に限定するのであれば、「AI技術のアプリ/サービス適用は、ものすご安くて、簡単に実現しやすい」のです。
もっと乱暴に言えば、AI技術とは「新規の設備投資ゼロ*)で実現できるイノベーション」であり、国家にも企業にも「おいしいイノベーション」なのです。
*)AI技術のプログラム研究開発は必要となりますので、コストゼロにはなりませんが。
ここまできて、ようやく私は、今回のAIブームのバックグランド ―― 国家や企業が、100億、1000億円の単位で資金を投入する理由 ―― を理解するに至りました。
つまり、国家や企業は、今や、このえたいの知れない"AI"なるものにすがりつくしか、打つ手がない ―― ということなのです。
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