検索
連載

儲からない人工知能 〜AIの費用対効果の“落とし穴”Over the AI ―― AIの向こう側に(18)(7/9 ページ)

AI技術に対する期待や報道の過熱が増す中、「抜け落ちている議論」があります。それが、AIの費用対効果です。政府にも少しは真剣に考えてほしいのですよ。例えば「荷物を倉庫に入れておいて」と人間に頼むコスト。そして、AI技術を搭載したロボットが「荷物を倉庫に入れておく」という指示を理解し、完璧にやり遂げるまでに掛かるトータルのコスト。一度でも本気で議論したことがありますか?

Share
Tweet
LINE
Hatena

AI投資の落とし穴

 しかし、それは、AIが人間の業務を100%代替できる、という条件がある場合です。実際に、AI技術で、今の江端の仕事のどれだけを実施できるかを考えてみると、これは「優良な投資対象」以前の話になるのです。

 現時点の私の業務の中で、AI技術に頼ることができるものといえば、「スパムメール」を取り除いてもらうくらいのことです。

 「お客に自動的にメールを送信する」「提案資料を作る」「プロジェクト管理をする」「予算提案をする」「特許発明を考える」 ―― これらについて、少なくとも現状のAI技術は何一つとして実現できません。私の試算では、私の仕事の2%でも交代できれば上出来、といったありさまです。

 しかし、この比較は、あまりにAI技術に対して冷酷過ぎると思いましたので、「未来に実現するであろうAI技術に対する期待を借金して」、再検討してみました。

 メールの半分くらいなら自動返信できるようになり、プロジェクト管理や、予算提案くらいであれば、過去の情報をひっぱり出して、ドラフト案を作るくらいのことはできるだろう ―― という「期待の借金」をしてみました。

 しかし、それでもたかだか14%程度です。私に仕事のメインである、研究実験用の環境構築やら、実験そのものを、AI技術で何とかできるのであれば、AIは私の代わりができると断言しても良いです*)

*)私は、会社の縁側(?)で、お茶をすすりながら、特許明細書を書いているだけの日々を、かなり本気で願っています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る