量産車向けは絶対に明け渡さない――ルネサス呉CEO:特集「Connect 2018」(1/4 ページ)
ルネサス エレクトロニクス社長兼CEOの呉文精氏は2017年12月25日、インタビューに応じ、投資方針や自動車向け事業でのルネサスの事業姿勢、2018年の経営方針などについて語った。
2017年12月25日、ルネサス エレクトロニクス社長兼CEOである呉文精氏はEE Times Japanなどのメディアのインタビューに応じ、2017年の事業の総括や2018年の展望などについて明らかにした。その中で、さまざまな半導体メーカーの参入が相次ぎ、競争が激しくなる自動車市場でルネサスの事業姿勢などにも触れ、NVIDIAやIntelとは一線を画した事業モデルで、事業規模を維持、拡大させるとの考えを示した。
比較的、順調だった2017年
――2017年業績を振り返ってください。
呉文精氏 2017年12月期売上高(Non-GAAPベース)は売上高7722億円を見込んでいる。(2016年12月期に減収要因となった)震災影響が解消したことや為替の影響、さらには2017年2月に完了したIntersil(インターシル)買収効果もあり、前年度比20.9%の増収となる見込みだ。中期経営計画では、市場平均成長率の2倍、具体的には前年度比8〜9%の増収をイメージしている中で、20%以上の増収になる。
重視している粗利益率見込みも46.3%。中計では4〜5年かけて毎年1〜2%ずつ改善させ、粗利益率50%を目指している中で、前年度比2.7%の改善となり、比較的、順調だった。
2017年は、われわれが扱っているほぼ全ての製品に対する需要が強く、需要に応えることに苦労した1年だったと考えている。
Intersil買収、新組織へ移行
――Intersilの買収完了した後、2017年7月に大きな組織改革を実施されました。
呉氏 新たな組織のポイントは2つで、1つはグローバルに収益責任を持つ本部に改めたこと。それまでは、営業、マーケティング、開発など機能別の組織となっていた上、欧州や米国など地域ごとに独自性が強い部分があった。そこで、「自動車」と、産業市場をはじめ家電、インフラ市場の大手顧客など約100社のリーディング企業向けビジネスを担当する「産業」と、汎用マイコンと、Intersilのアナログ&パワーなど、主に販売代理店を活用したビジネスを担当する「ブロードベースド」の3本部制とした。なお、ブロードベースド本部の責任者は、IntersilのCEOだったNecip Sayiner氏にお願いしており、3本部うち1本部の責任者を米国人が務めるという体制になった。
もう1つの新体制のポイントは「アジリティー」で、機動性、機敏性のある組織への変更だった。ある程度、小さなビジネスごとに、機動性を持って収益責任を持った人が投資などの判断を行えるような組織に改めた。
収益責任を持って、機動性のある組織というのは、規模こそ小さく、単純なビジネスではあるがIntersilの方が、実現できていた。逆に、ルネサスは、やや大艦巨砲だったので、もっと組織レイヤーを減らし、意思決定を機敏にする必要があった。そういう意味では、Intersilを切り刻んで、ルネサスが飲み込むのではなくて、Intersilを触媒にして、むしろルネサス本体を、よりグローバルで、より機動性のある、より収益感覚を持った会社に変える大きなチャレンジを行っていると考えている。
ルネサスは、先端技術、大口顧客とのリレーションシップ、品質という面では、世界でも極めて強く、金メダルの域に達している。この3つの強みを殺さない形で、収益感覚、グローバル運営、機敏にアジリティを持つという3つの強みを付け足して、勝っていきたいということが、新組織の意図。新体制は、順調に滑り出している。
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