自動運転向け技術をCESで披露、存在感を強調するNXP:CES 2018
Qualcommによる買収が完了せずに長引く中、NXP Semiconductorsは「CES 2018」でADAS(先進運転支援システム)や自動運転向け技術を展示する。“NXP”として自らの存在感をアピールするようにも見える。
2017年は比較的“控えめ”にも見えたが……
NXP Semiconductors(以下、NXP)のオートモーティブ事業部は、Qualcommによる買収手続きが長引いていたこともあり、2017年中は比較的控えめな態度を維持していたといえる。しかし同社は、米国ラスベガスで2018年1月9日(現地時間)に開幕した「CES 2018」において、製品発表を行うことにより、このような低姿勢を終わらせることになるだろう。
NXPは、LG Electronicsおよび、アルゴリズム関連の専門技術を提供するドイツHELLA Aglaiaと、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車向けの技術開発で協業するという。これが、CESにおけるNXPの発表の目玉の1つだ。この協業により、NXPが「S32V」プロセッサをベースとして開発した、ADASおよび自動運転車向けのプラットフォーム「Automotive Vision Platform」を推進していく考えだという。
さらにNXPは、超高解像度のイメージセンサーをはじめとする、自動車レーダー製品シリーズの拡充を発表する。同製品シリーズは、長距離、中距離および短距離レーダーの要件に対応可能だという。
またNXPは、「Bluebox 2.0」プラットフォームをベースとした「Automated Drive Kit」も発表するようだ。これは、「自動運転車ブレイン」とも呼ばれる。NXPは、このAutomated Drive Kitを、AutonomouStuffが開発したソフトウェアと組み合わせることにより、オープンかつ高速で柔軟性の高い自動運転車開発プラットフォームを探し求めているティア1や自動車メーカーに向けたソリューションとして、市場投入していきたい考えだ。
さらに、NXPは2017年12月に、Baiduと「Apollo Open Autonomous Driving Platform」で提携したことを発表した。同プラットフォームはBaiduが開発したもので、“ロボットカー向けAndroid”としても知られている。この提携により、NXPの半導体チップがApollo Open Autonomous Driving Platformをサポートできるようになるとしている。
こうしたさまざまな発表内容から、NXPが、「ADASや自動運転車向けオープンプラットフォームの強力な提唱者としての位置付けを確保したい」というテーマを掲げていることが分かるだろう。IntelやNVIDIAなどの半導体メーカーは、自動運転車の開発が急速に進む時代の中で、自動車メーカーと直接協業することにより、自動車関連のティア1サプライヤーを切り捨てていく傾向にある。
一方NXPは、ティア1の主要なパートナー企業としての役割を見いだすことにより、ティア1各社がシステムインテグレーターとしての付加価値を維持できるようサポートを提供している。
NXPのオートモーティブ事業部でCTO(最高技術責任者)を務めるLars Reger氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「当社は、最大手の車載用半導体メーカーとして、自動車全体の構想について語ることはできても、ティア1と競争する存在になってはならない。当社の半導体チップ事業の規模を拡大できなくなるからだ。私は、NXPオートモーティブ事業部のCTOとして、“ブロック”のピースをできるだけたくさん配ることが自分の仕事だと考えている」と述べている。
技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligence(VSI Labs)の創業者であり、主席アドバイザーを務めるPhil Magney氏は、「NXPは、これまで長期間にわたり、自動車向けエレクトロニクス分野に携わってきた。このため同社は、他のどの企業よりもティア1が担う重要な役割について理解しているといえるだろう。自動運転時代におけるティア1の役割を軽視してはいけない」と述べている。
LG Electronicsは、NXPがS32V Automotive Vision Platformのパートナーとして公表した初めてのティア1である。Reger氏は、その後ろには大手自動車メーカーが存在することは明かしたが、メーカー名については口を閉ざした。VSI LabsのMagney氏は「LG Electronicsはセンサー分野のティア1サプライヤーであり、同社のカメラ技術はMercedes Benzに使われている。こうした背景から、NXPは自社製品をMobileyeからの置き換えとして提案できるようになる」と述べた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動運転技術の新たな競争を仕掛けたNVIDIA
NVIDIAが、自動運転車向けの最新SoC「DRIVE PX Pegasus」を発表した。1秒当たり320兆回の演算をこなす同チップの登場で、自動運転向けの演算性能をめぐる新たな競争が始まるかもしれない。 - トヨタは“モビリティサービスメーカー”を目指す
トヨタ自動車は「CES 2018」の基調講演で自動運転のコンセプトカー「e-Palette」を発表した。登壇した社長の豊田章男氏は、トヨタは自動車メーカーから“モビリティサービスを提供するメーカー”へと変わることを示唆した。 - 2016年の車載半導体市場、NXPが首位を維持
英国の市場調査会社であるSemicast Researchが、2016年の車載ICベンダーランキングトップ10を発表した。ランキングの順位は2015年に比べてほとんど変化しておらず、NXP Semiconductorsが前年に続き首位に立った。 - Qualcomm/NXPの合併に立ちはだかる米中政府の壁(前編)
QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は、2016年に発表された大型M&A案件の1つである。この買収は2017年末に完了する見込みだが、米国政府と中国政府という2つの大きな壁によって、買収完了が長引く可能性がある。 - NXP、音声認識技術でAmazonと協業
NXP Semiconductorsは、Amazonが提供するクラウドベースの音声認識サービス「Amazon Alexa」に対応した機器の開発を簡素化することができる「NXPリファレンスプラットフォーム」を発表した。 - QualcommのNXP買収、完了は2018年にずれ込む
QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は、当初は2017年内に完了する予定だったが、2018年初頭にずれ込む可能性が高くなった。中国と欧州の規制当局による審査が長引いているからだ。