中国の半導体政策は「無謀」、各国の警戒も強まる:掲げている目標に遠く及ばず(1/2 ページ)
半導体産業の強化に注力する中国だが、目標の到達には計画以上の時間が必要なようだ。資金力をものにM&Aを進めようとする姿勢に対し、警戒を強める国もある。【訂正】
目標が高過ぎる?
米国の市場調査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるBill McClean氏によれば、中国は、半導体産業の拡大に向けた野心的な意欲を表明しているが、掲げていた目標の達成には遠く及ばないようだ。同氏は、「短期的に見ると、世界半導体業界にとって2018年は、DRAM市場や設備投資費などに浮き沈みはあるものの、素晴らしい年になるだろう」と述べている。
McClean氏の予測によると、中国の半導体需要において、中国の半導体生産金額が占める割合(=自国の半導体需要を、自国の生産で満たせる割合)は、2020年には15%、2022年には20%になる見込みだという。この比率の伸びは非常に大きいが、中国政府が掲げる「2020年に40%、2022年に70%」という目標とは、かなりの隔たりがある。
【訂正:2018年2月6日11時 初出では「中国の半導体需要は、2020年に世界全体の15%を、2022年には20%を占めるようになる」「2020年のシェア獲得を40%、2022年には70%を見込んでいた」としておりましたが、これは「世界全体に占める割合」ではなく、「中国が、自国の需要を自国の生産で満たせる割合」の意味でした。大変申し訳ございません。】
同氏は、ある年次イベントの会場において、「中国が半導体製造分野において、世界の他の国々に取って代わるなど、あり得ない。無謀な目標だといえるだろう」と述べている。
中国は、国内の半導体産業に約1200億米ドルを投じるとする計画を発表した。その主な理由の1つとして、半導体の輸入額が石油を上回っていることを挙げている。しかしMcClean氏は、「この1200億米ドルのうち、今後3年間で設備投資費に充てられる金額は、全体の約10%程度にとどまるのではないか」と予測する。
同氏は、「2022年における中国の半導体生産量は、世界全体の7.2%となる336億米ドルに達し、2017年比で5%増となる見込みだ。中国の半導体生産量は、増加傾向にあるものの、2022年までに世界全体の10%を超えることはないだろう。中国は、DRAM市場では10%のシェアを獲得できる可能性があるが、Micron TechnologyやSamsung Electronics、SK Hynixなどから大きなシェアを奪い取ることは難しい」と指摘する。
Samsungは設備投資増で中国を封じ込む戦略か
同氏は、「Samsung Electronicsは2017年に、設備投資費を同社平均の2倍以上となる260億米ドルに増額すると発表したが、これは、中国の野心的な目標に影響を受けたためだと考えられる。Samsungは、中国メーカーに対して先制攻撃を仕掛け、自らの生産能力を拡大することで、中国を市場から直ちに締め出そうと考えたのだろう」と述べる。
McClean氏は、「Samsungが2017年秋に発表した設備投資費は、IntelとTSMCの設備投資費の合計金額を上回る。これは、私がこれまで半導体業界に携わってきた中で、一番驚いたことの1つだった」と述べる。同氏は、半導体業界のアナリストとして、38年間の実績を持つ人物だ。
同氏は、「私の見方が過度に懐疑的なのかもしれない。中国は、鉄鋼などの他の産業分野においてこれまでに達成してきたことを、同じように実現できるのではないかとする見方もあるようだ。しかし、半導体はこれらの分野とは異なる。18nmプロセスを用いたDRAMは、簡単に習得できるような技術ではない」と指摘する。
中国の半導体消費量は、2017年には世界全体の38%だったが、2022年には43%に達するとみられる。この中には、「iPhone」を製造するFoxconnなどの大手組み立てメーカーも含まれている。McClean氏によると、中国の半導体消費量全体の中で最も大きな割合を占めているのはDRAMで、2017年には約275億米ドルに達したという。
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