期待の2020年へ、2018年は準備の年 ――座談会編2:IHSアナリスト「未来展望」(9)(1/2 ページ)
IHS Markit Technologyのアナリスト5人が2018年の半導体市況と半導体のアプリケーション市場の展望を語る。
2018年の半導体市況と用途市場展望
IHS Markit Technologyのアナリスト5人がエレクトロニクス業界の2018年&未来を語り合う座談会編。
第1回では2017年を振り返った。第2回は、2018年の半導体市況と、半導体のアプリケーション市場の展望を語る。
【座談会 参加アナリスト】
- 南川明氏(日本調査部ディレクター):半導体業界を中心にエレクトロニクス産業全般を担当。
- 棚町悟郎氏(アソシエイト・ディレクター):主に自動車分野の市場分析/ビジネス分析を担当。
- 李根秀氏(主席アナリスト):機器分解によるデバイスのコスト調査などを担当。
- 大庭光恵氏(シニアアナリスト):主に情報通信分野の市場分析/ビジネス分析を担当。
- 杉山和弘氏(シニアアナリスト):半導体/エレクトロニクス産業全般の市場分析/ビジネス分析を担当。
半導体市場成長は通常速度に
EE Times Japan編集部(以下、EETJ) 2018年の半導体市況はどのようになると予想されていますか。
南川氏 2017年のようにメモリが市場を大きくけん引するということはなくなり、半導体市場全体の成長率は通常速度に戻るとみている。
EETJ メモリ市場の成長はどのようになりますか?
メモリの市場成長率は金額ベースでほぼ0%になるだろう。価格が大きく下落するためだ。価格下落の要因は、需給両面である。需要側では、スマホの調整が始まっておりNAND価格は下落するだろう。一方でDRAMはサーバ向け需要が堅調なためNANDほど価格は下がらないと見ている。
供給側では、これまで歩留りが思うように上がってこなかった3次元構造NAND型フラッシュメモリ(3D NAND)の歩留りが上がってくるだろう。さらには、メモリメーカーが戦略的に価格を下げてくる可能性が高まっていることが挙げられる。
メモリは、価格が下がらないと市場自体が拡大しないため、将来的な需要を喚起するには、戦略的な値下げが必要になる。また、“競合他社を振るいにかける”という意味合いで戦略的値下げに踏み切ることも十分にあり得る。
EETJ 中国勢がメモリに積極投資を行っていますが、生産は立ち上がってくるのでしょうか。
南川氏 半導体は、お金をつぎ込めば、生産できるものであり、多少の時間を要したとしても、いずれは必ず、生産は立ち上がる。
DRAMが2019年に、NANDフラッシュが2020年に、それぞれ中国勢が本格的な量産をはじめ、需給バランスに大きな影響を及ぼすようになるだろう。
EETJ このまま半導体市場は、マイナス成長、不況へ向かっていくのですか。
南川氏 メモリ価格は大きく下がってくるだろうが、それが“半導体不況”にはつながらない。メモリ価格下落はメーカーの戦略の範囲になるだろうし、半導体需要自体もそんなに悪くはないだろう。
スマホは成長がスローダウンこそするが、相当な規模の出荷台数は維持される。PCの下げ止まり感も出てきている。自動車についても販売台数は減少するだろうが、ADAS(先進運転支援システム)などの普及で、車載エレクトロニクスについては成長が続く。さらに産業分野は、車載分野などよりも好調で、さらに伸びる可能性が高い。
総じて、2018年の半導体市況は堅調に推移する。2017年からのシリコン不足は、2018年も続くだろう。
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