「iPhone X」の密かな勝者たち(前編):MSAPや極薄IMU(1/2 ページ)
これまで、「iPhone X」の分解では、ロジックICに焦点が当てられてきた。今回は、それ以外の“勝利者”を取り上げてみたい。
「iPhone X」の“隠れた”勝利者たち
Appleの「iPhone X」の分解結果については、既にさまざまな情報が広まっている。しかし、それでもまだ不十分だとする声も上がっているようだ。
確かに、iPhone Xの分解はこれまで、ロジックICに焦点が当てられていた。しかし、フランスの市場調査会社Yole DéveloppementのリバースエンジニアリングパートナーであるSystem Plus Consultingで、CTO(最高技術責任者)を務めるRomain Fraux氏は、「Appleは今回、光モジュールやコンポーネント、MEMS、パッケージング、PCB技術といった分野を開拓することに成功した」と述べている。
EE Timesは2018年1月、Yole DéveloppementとSystem Plus Consultingのアナリストたちにインタビューを行った。
Yole DéveloppementのCEO兼プレジデントであるJean-Christophe Eloy氏は、「AppleがiPhone Xで実現した、最も重要な技術的進歩は」とする問いに対し、「モバイルデバイス向けの光システムだ。同社の3Dセンシングは、既存のAndroidスマートフォンよりも高い精度で顔認証を実現する。今や、タブレット端末から自動車、ドアベルに至るまで、あらゆる製品に普及しつつあり、重要なマイルストーンを達成している」と答えている。
EE Timesは、Eloy氏とFraux氏に対し、「詳細な分解の結果発見した目玉技術」や、「iPhone Xのデザインウィンを獲得したメーカーの中に、あまり名の知られていない企業は存在するのか」といった点について、質問を投げかけた。
関心が高まる「MSAP」
両氏とも、高度な統合を実現したiPhone Xに大きく貢献した主要メーカーとして、オーストリアのプリント基板メーカーであるAT&Sを挙げている。
TechInsightsやiFixitなどの分解を専業とする企業も、iPhone Xに搭載されているサンドイッチ構造のプリント基板に驚嘆していたが、Fraux氏は、「現在のところ、プリント基板上でこのような前例のないレベルの高密度インターコネクトを実現することができるのは、AT&Sだけだ」と主張する。
また同氏は、「Appleは、2つのプリント基板を重ねて集積したことにより、iPhone Xの実装面積を15%縮小して、電池容量を増やすことに成功したのだろう」と付け加えた。
スマートフォンの高密度インターコネクトを、低コストかつ高速に量産できるようになったのは、明らかに、AT&SのMSAP(Modified Semi-Additive Processes)といった、さまざまな最先端製造技術によるところが大きい。Fraux氏は、「MSAPは、積層基板またはビルドアップ基板の製造に適用される工法で、薄い銅箔をシード層として機能させ、その上にめっきで配線するものだ」と説明する。
Eloy氏は、「AT&SのMSAP技術は、同社の最近の業績にも多大な貢献をしている」と指摘する。AT&Sの業績発表によると、同社の2017年第1四半期〜第3四半期(2017年4月1日〜12月31日)の売上高は、前年の同期間と比べて24.5%増となる7億6590万ユーロに達したという。
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