「iPhone X」の密かな勝者たち(前編):MSAPや極薄IMU(2/2 ページ)
これまで、「iPhone X」の分解では、ロジックICに焦点が当てられてきた。今回は、それ以外の“勝利者”を取り上げてみたい。
超薄型のIMU
最新の「Apple Watch」にLTEモデムを追加するというAppleの決断は、大きな課題も生んだ。スマートウォッチの厚みだ。
Fraux氏によれば、Bosch Sensortec(以下、Bosch)が、慣性計測装置(IMU)を新型Apple Watch向けに強化し、カスタマイズしたという。同氏によると、BoschはIMUの厚さを0.9mmから0.6mmに低減し、非常に薄型の6軸IMUを実現したとする。
その結果、Boschは、「iPhone 8」とiPhone Xでは、InvenSenseに取って替わり、「Apple Watch Series 3」ではSTMicroelectronicsに取って替わったという。
Fraux氏の推計では、これら3つのデザインウィンを獲得したことによって、Boschは年間数億もの販売台数を達成することになる。Boschは事実上、「カスタマーアプリケーション向けのMEMS IMUにおいて、誰もが認めるリーダー」になるという。
System Plus Consultingに最近掲載された記事の中で、Fraux氏は「Boschは、特に加速度センサー分野に大きな変化をもたらした。この分野では、より優れたセンサー特性を実現できる新しい構造の開発により、従来のおもり方式は使われなくなっている。
さらにBoschは、長年にわたり改善が見られなかったマイクロマシニングプロセスも改良し、加速度センサーとジャイロセンサー向けに導入している」と説明した。Fraux氏は、「さらに、加速度センサーやジャイロセンサーからのデータを統合するために、新しいASICも開発されている。当然、低消費電力化や他の機能の追加なども実現されているだろう」と付け加えた。
IntelとQualcommの両方を採用
業界では、最新iPhone向けモデムのデザインウィンをめぐり、IntelとQualcommの間で競争が繰り広げられている。ところが、iPhone Xでは、両者に軍配が上がったことは誰もが知るところである。つまり、モデルや地域によって、IntelあるいはQualcommのモデムチップが採用されているのだ。面白味のない展開ではある。
あまり議論されていない問題ではあるが、RF SiP(System in Package)はスマートフォンのフロントエンドモジュール向けに設計されている。これがなぜ重要になるのだろうか。
System Plus Consultingは独自のレポートの中で、5G(第5世代移動通信)は「市場における新たな秩序」の前兆になるとし、「高い技術を持つ競合同士が、より高密度のフロントエンド通信デバイスの開発を目指すようになっている。こうした背景の中、パッケージングは、性能、統合、コスト効率が最適化される主要な領域になっている」と分析した。
Fraux氏は、iPhone Xに搭載されている、Broadcomの高度なRF SiPに注目した。Broadcomは、このSiPに、18個ものフィルターを統合した。Broadcomは同SiPを、日本の中帯域および高帯域(3.6GHz帯のBand 42)をサポートできるように開発したという。このモジュールは、SIMフリーのスマートフォンに欠かせない部品となっている。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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