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政府vs企業で揺れる「副業」、労働者にメリットはあるのか世界を「数字」で回してみよう(47) 働き方改革(6)(10/11 ページ)

「副業」は、それを推進するか否かにおいて、政府と企業のスタンスが(珍しく)対立する項目です。人口の減少が深刻な今、政府が副業を推進するのも分かる気はしますが、当事者である私たちが知りたいのは、これに尽きると思います――「結局、副業ってメリットあるの?」

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今回のまとめ

 それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。

【1】政府主導の「働き方改革」の重要項目の1つである「副業・兼業」について考えてみました。

【2】公文章にも法律にも「副業・兼業」の定義が存在しないことを確認した後、1980年代まで、各企業は「副業・兼業」を、かなり徹底的に排除していたという事実を、「兼業主婦」を職場からたたき出すという、非人道的な方法で実施していた例で説明しました。

【3】この「副業・兼業」の問題について、政府、企業、経団連、司法、労働者の5人の観点から俯瞰し、この「働き方改革」では珍しく政府と企業の対立が存在していることを明らかにしました。

【4】また上記の5人の本音を、私なりに抽出してみました。ざっくり分類すれば、この「副業・兼業」の問題に関しては、政府が「推進」、司法が「認容」、企業は「反対」、経団連が「日和見」、労働者は「静観」といったことを明らかにしました。

【5】この「兼業・副業」を、マルクスの疎外論から検討を試みましたが、現在のパソコンとインターネットを前提とする環境においては、この検討方向は間違っていることが分かりました。

【6】本コラムの結論として、この「兼業・副業」の問題は、利害関係が複雑すぎて、どっかをつつくと問題が悪化しながら拡大することを明らかにしました。この問題は、当面「日和見」を決め込むのが良いという、江端見解を示しました。

【7】小川建設事件(東京地方裁判所 昭和57年11月19日)の判決文を読んで、「本業のために十分な休息を取らない副業の影響」をシミュレーションでの計算を試みました。この結果、「企業が残業を認容し、残業代を出してくれるのであれば、副業の意義が失われる」という結果を数値で明らかにしました。

 以上です。


 今となっては信じられない話かもしれませんが ―― ひと昔前、会社のノートパソコンを自由に社外に持ち出すことができました。

 ですが、情報流出が社会問題化になるにつれ、ノートパソコンの社外持ち出しは禁止となり、学会などの社外発表はもちろん、お客さまの会社に伺う時でさえ、事前の社内稟議が必要となりました。

 パソコンの中のファイルの内容は詳細にチェックされ、会社指定のノートパソコンしか持ち出せなくなり、しかも、飛行機を利用する時には、ノートパソコンは必ず手荷物として機内に持ち込むことが、ルールとなりました。

 その当時、公私の区別なくインターネットを使って家族に連絡を取ったり、自宅のパソコンを使って会社の仕事をしていた私たちにとっては ―― 『私たちの楽しい遊園地は、もう、なくなってしまったんだなぁ』と思ったものです*)

*)繰り返しますが、これは、パソコンを使える人が「特別な人(というかオタク)」と見なされ、インターネットを使える人が「エリート」と誤解されていた、牧歌的な時代の話です。

 当然、会社は、社員に対して、このようなノートパソコンやインターネットの使用制限に関する説明会を何度も開き、社員の意識を変えるように頑張っていました。

 ある日のこと、そのような説明会で、頭の軽い新人の一人が、頭の軽い感じで質問をしました。


―― タブレットコンピュータは、いいんですか?


 この瞬間の、説明会の説明者の困惑した顔と、年長の先輩達の憤怒の表情は見物でした。

 その場は、「検討中です」という説明員の一言で収まりましたが、その後、その頭の軽い新人は、先輩達に取り囲まれて、ほとんどリンチのような形で説教されていました。

 「バカか! お前は? 管理部門も研究部門も、お互いが、『その「グレーゾーン」には触れたくない』ということくらい分からんのか! このどあほう!!」

 「お前が質問すれば、当然、管理部門は、『禁止』の方向で回答せざるを得なくなるだろうが! 今回の説明会で、『暗黙の落し所』を模索している、私たち双方の努力を、お前の頭は理解できんのか! このKY野郎!!」

 ……このように、「白黒はっきりさせない」ことって、本当に大切なんです。

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