政府vs企業で揺れる「副業」、労働者にメリットはあるのか:世界を「数字」で回してみよう(47) 働き方改革(6)(3/11 ページ)
「副業」は、それを推進するか否かにおいて、政府と企業のスタンスが(珍しく)対立する項目です。人口の減少が深刻な今、政府が副業を推進するのも分かる気はしますが、当事者である私たちが知りたいのは、これに尽きると思います――「結局、副業ってメリットあるの?」
そもそも「副業・兼業」って?
まず、「そもそも、"副業・兼業"って何?」から始めたいと思います。
結論から言いますが、法律はもちろん、政府の公文章においても、明確な"副業・兼業"の定義がありません。
私が調べた範囲では、政府の調査レポートの用語説明の欄に、数行の記載があっただけです ―― ので、毎度のことですが、私なりの解釈を行ってみました。
使用されている文章からは、「副業」は自発的であり、「兼業」は義務的である、というニュアンスは感じられますが、これもカッチリした定義とはいえません ―― というか、政府もマスコミも、この2つの用語の区別には、あまり深くこだわっていないです。
しかし、私は、この2つの用語の持つ意味の重さ("兼業">"副業")は、重要だと考えています。
後述しますが、わが国の8割の企業は、現在、社内規則で「副業・兼業」を禁止しています。一方、"副業"よりも、さらに重い意味を持っているはずの"兼業"業務 ――「兼業主婦(まれに兼業主夫)」―― が、社内規則で処分を受けたという話を、ただの一度も聞いたことがありません。
つまり「兼業主婦(主夫)」を看過して、「副業」を禁止することは
―― 矛盾しているじゃないか
と。
ところが、今から約40年前のわが国の企業では「矛盾していなかった」のです。
今では、到底信じられないような念書(契約書)や論説が、普通に存在していたのです。
当時、企業は"専業"する社員(女性だけですが)を強制的に退職させることで、"専業"や"副業"を、形式的ではなく実体的に排除していた訳です(なお「35歳以上の女性の強制退職」は、当時でも筋が通りません)。
なお、今なら、このような念書は、公序良俗違反(民法第90条)を持ち出すまでもなく、男女雇用機会均等法によって無効となります。ネットでは大炎上、省庁から行政処分を受け、その会社(法人)だけでなく、社長(個人)が訴えられるレベルです。
このような「兼業主婦」の問題が、現在状態に至った経緯を簡単に以下にまとめておきました(次回、本格的に説明します)。
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