政府vs企業で揺れる「副業」、労働者にメリットはあるのか:世界を「数字」で回してみよう(47) 働き方改革(6)(8/11 ページ)
「副業」は、それを推進するか否かにおいて、政府と企業のスタンスが(珍しく)対立する項目です。人口の減少が深刻な今、政府が副業を推進するのも分かる気はしますが、当事者である私たちが知りたいのは、これに尽きると思います――「結局、副業ってメリットあるの?」
「労働疎外」を論じてみる
かつて、私の住んでいた学寮の先輩は「労働疎外」という言葉を頻繁に使っていました(著者のブログ)。
資本家と労働者は、対立する階級に属していて、(1)資本家は、労働者を資本家の道具(機械)としてしまい、(2)労働者は"疎外された"労働者の労働環境を改善するために、資本家と闘争を繰り広げてきた ―― ということなのですが、私には、これがさっぱり理解できませんでした*)。
*)この理論でいくと、町工場の木工工場の一人息子だった私は、資本家階級に属していて―― 学費と生活費を稼ぐために、週7日でバイトをしていた「ブルジョアジー」です―― 笑わせるな。
ここで"疎外された"とは、自分が行う生産行為や生産物が、消費者にどう受け取られているのか見えなくなっている状況を言います(「仲間外れ」とか「いじめ」のことではありません)。
この「疎外」の話は、近年の「格差」の問題と一緒くたに論じられることが多いのですが ―― 私は、これもさっぱり理解できません。
近年の、SNSやクラウドソーシング、クラウドファンディングは、生産者と消費者が近づけているように思えます。ネット世界ではむしろ、「受容」が過度に進んでいるような気がするのです ―― 正直、私にはうっとうしいと思えるくらいに。
このような私の思いを、以下の表にまとめてみました。
結論として、パソコンとインターネットによる副業・兼業を「マルクスの労働疎外論」から論じることについては、うまくないな、と思いました。少なくとも、私は「『疎外論』はからの検証は失敗」と判断しました*)。
*)と言いつつ、この論を展開できる人がいたら、ぜひメールにてご意見を聞かせてください。work_style_reform@kobore.netを作成しました。
さて、今回のコラムの「副業・兼業」についての私の総括は、以下のようになります。
後ろ向きな結論なのですが、取りあえず「日和見」を決めこんで、周りの状況に合わせて場当たりに対応する――というのが、現時点での「副業・兼業」問題の最適戦略であると考えます。
では、本コラムの最後に、シミュレーション結果を示します。このシミュレーションは、小川建設事件(東京地方裁判所 昭和57年11月19日)の事件を参考にして作りました。
この事件は、「17時15分まで本業で働き、18時から0時までキャバクラの会計係などをしていたことを理由に解雇された社員が、その解雇の取消を求めた」裁判です。
争点は、「毎日6時間の労働が、労務の提供に格別の支障を来す副業であるかどうか」、という点にあり、「本業のために十分な休息を取らない副業の是非」を問うものでした。
裁判官は「解雇は正当である」と判示しました。さらに判決文の中には「就業時間中居眠りが多く、残業を嫌忌する等の就業態度がみられ」との記載があり、十分な休息を取らない副業の弊害を認定したものになっています。
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