車載用の埋め込みフラッシュメモリ技術:福田昭のストレージ通信(92) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(5)(2/2 ページ)
今回は、大容量、具体的には車載用の埋め込み不揮発性メモリ技術を取り上げる。車載用の不揮発性メモリ技術は、1トランジスタのNORフラッシュ(1T NOR Flash)技術と、スプリットゲートフラッシュ技術に大別される。
低消費電力を特長とするスプリットゲート技術
講演者のAlfonso Maurelli氏は主な車載用埋め込みフラッシュメモリ技術として、4種類のメモリセル技術を講演スライドで紹介していた。すなわち、「1T」「1.5T(ESF3)」「1.5T(MONOS)」「1.5T(HS3P)」である。これだけだと読者には分かりづらいので、新たに一覧表を作成した。
最初の「1T」は、1トランジスタのNORタイプ埋め込みフラッシュ(1T NOR eFlash)技術である。データの書き込みには「チャンネルホットエレクトロン(CHE)」、データの消去には「ファウラーノルドハイムトンネリング(FNトンネリング)」を使う。
ここでCHEとは、チャンネル領域に高電界が加わることによって電子が加速され、ゲートや基板などに飛び込む現象を指す。NORタイプではゲートが浮遊ゲート(直接にはどこにも電気的に接続していないゲート)なので、浮遊ゲートに電子が飛び込むように制御する。飛び込んだ電子は貯蔵される。これがトランジスタのしきい電圧を変化させ、データとなる。
またFNトンネリングとは、高電界によってゲート絶縁膜が見かけ上は薄くなり、電子がトンネルする現象を指す。この現象を利用して消去動作では、ゲート絶縁膜にFNトンネリングを起こして浮遊ゲートの電子を基板に引き抜く。
続く「1.5T(ESF3)」「1.5T(MONOS)」「1.5T(HS3P)」は全て、スプリットゲート技術の埋め込みフラッシュである。これらのスプリットゲート技術ではいずれも、書き込みにSSI(Source Side Injection)のホットエレクトロン注入を使う。SSIとはソース側に高電界を加えることによってホットエレクトロンの注入効率を高める技術で、CHEに比べると少ない電流でデータを書き込める。
スプリットゲートの具体的な構造は、一つではない。いくつかの構造が考えられ、商品化されている。具体的な事例は、次回以降に述べよう。
(次回に続く)
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