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Uber車の死亡事故、自動運転開発の“代償”なのか事故直前の映像を警察が公開(1/3 ページ)

Uberの自動運転車が2018年3月18日(米国時間)に起こした、歩行者死亡事故。事故が起きた米アリゾナ州テンペの警察は、事故直前の映像を公開している。この事故は、自動運転車の安全性について、議論を加速させるきっかけとなりそうだ。

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Uberの自動運転車による死亡事故

 Uberの自動運転車が、米国アリゾナ州テンペで2018年3月18日(現地時間)、自動運転モードで走行中に、歩行者に接触して死亡させる事故を起こした。この時運転席には、安全性確保のためにドライバーが乗っていたという。

 テンペ警察は、翌日の3月19日に記者会見を行い、「予備調査の内容から、Uberのロボットカーは、Volvoの2017年式『XC90』で、時速約40マイル(時速約64km)で走行していたことが分かっている」と述べている。


Volvoの「XC30」。UberはVolvoに、2万4000台の自動運転車を発注している 画像:Uber

 警察によれば、歩行者が自転車を押しながら、横断歩道から外れて道路を横断していたところに、Uber車が接近してきたとみられている。同車が減速した痕跡はないという。

 今回の事故は、自動運転車と歩行者間の死亡事故としては米国内で初となるが、このために今後、自動運転車開発競争が減速していくことになるのかどうかは、今のところまだ不明だ。

 しかし、ソーシャルメディア上では既に、白熱した議論が展開されている。LinkedInでは、ある投資家が、「今回の死亡事故は、発展の対価といえるのではないか。1000人を救うために1人の命を失うのは、許容範囲内だといえる」と述べている。また保険アナリストは、「今回の事故は、決して歓迎されることのない新たな脅威だといえる。飲酒運転をするドライバーや、タイヤがパンクして制御不能になったクルマなど、人間が運転する自動車が起こすであろう事故については、誰もがある程度想像している。だがそれが自動運転車となると、誰も何も予測できないのではないだろうか」と指摘する。

 今回の悲劇的な事故は、自動運転車に対する消費者の意識に影響を及ぼすだけでなく、米国ワシントンD.C.で展開されている自動運転車をめぐる議論にも、確実に重大な影響を与えるとみられる。

 技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligence(VSI Labs)の創業者であり、主席アドバイザーを務めるPhil Magney氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「今回の事故は、米国上院が、自動走行車を推進する『AV START Act(American Vision for Safer Transportation through Advancement of Revolutionary Technologies Act)』法案の可決を目指していたさなかに、運悪く発生したといえる。米国下院は2017年に、AV START Actとよく似た『SELF DRIVE Act(Safely Ensuring Lives Future Development and Research in Vehicle Evolution Act)』という法案を、全会一致で可決している」と述べている。

 Magney氏は、「米国上院の反対派は、今回の事故を、自動運転車の危険性が非常に高いことを裏付ける証拠として利用するのではないか」と懸念する。

 米運輸省道路交通安全局(NHTSA)と米国家運輸安全委員会(NTSB)は、今回のUber車の事故について調査するよう指示している。Magney氏は、「NHSTAとNTSBの調査結果よりも早い報告については、時期尚早と見なされるだろう。また政治家たちも、事故の調査結果を確認する前にSELF DRIVE Actに投票しようとは思わないはずだ」と述べる。

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