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埋め込みフラッシュIP大手ベンダーSSTのメモリ技術:福田昭のストレージ通信(95) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(8)(2/2 ページ)
今回は、SST(Silicon Storage Technology)が開発した埋め込みフラッシュメモリ技術を紹介する。同社は「SuperFlash(スーパーフラッシュ)」と呼んでいるが、その最大の特徴はスプリットゲート方式にある。
最新世代の「ESF3」技術で28nm以下の微細化を目指す
最新世代の「ESF3」では、結合ゲート(CG: Coupling Gate)の導入によって微細化をさらに押し進めた。120nm、90nm、65/55nm、45/40nm、28nmの製造技術で使われている。10年を超える量産実績がある。
ESF3の導入によってメモリセル面積はかなり小さくなった。90nm技術のメモリセル面積を「1」とすると、28nm技術のメモリセル面積は、「0.3」になる。具体的には、0.05μm2以下を実現できているとする。
製造プロセスは、CMOSロジックのプロセスに高電圧用のウエル形成とセルトランジスタ形成、高電圧対応絶縁膜形成とトンネル絶縁膜形成などを追加したものである。追加するプロセスは、モジュール化されている。
フラッシュメモリの微細化で問題となるのは、セルトランジスタが蓄積する電荷のばらつきである。SSTのSuperFlash技術の場合、ESF3の28nm技術でも1000個を超える電子をセルトランジスタに蓄積できている。電荷のばらつきが信頼性に与える影響は極めて小さい。このため、28nm以下に微細化する余地がある。
ESFの技術世代とセルトランジスタが蓄積する電子数の推移。縦軸が電子の数、横軸が微細加工寸法。ESF3技術では、微細化しても電子の数がそれほど減らないことが分かる。出典:STMicroelectronics(クリックで拡大)
(次回に続く)
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